女の世紀を旅する
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2001年12月27日(木) アメリカの中国脅威論の背景 (2)

2001年,アメリカの世界戦略は転換した!!  仮想敵国は中国






 2001年3月21日、ホワイトハウスで、アメリカのラムズフェルド国防長官がブッシュ大統領に対し、アメリカ軍の大規模な戦略転換についての計画を説明した。90分間にわたって行われた会合は、ブッシュ政権が初めて米軍の全体的な戦略について検討するものだったが、同時にその内容は、第2次大戦から50年間続いてきたアメリカ軍の戦略を、根本から変えるものだった。

 新戦略の前提となっているのは、1991年にソ連が崩壊し、その後を継いだロシアも弱体化し、もうヨーロッパがソ連からの軍事的脅威を受けなくなったという、冷戦後の変化である。第2次大戦後のアメリカ軍は、ソ連の侵略から西ヨーロッパを守ることを重要な課題としてきたが、もうその可能性はなくなった。

 そして新戦略では、今やソ連に代わって中国がアメリカにとって脅威となり、今後アメリカが他国と戦争せねばならないとしたら、その相手は中国であると予測している。

 アメリカが中国と戦うとすれば、前線基地となるのは沖縄や韓国の米軍基地
だが、近年は世界的に弾道弾ミサイルの精度が上がっており、中国のミサイルがこれらの米軍基地を正確にねらい打ちできる可能性が高まっているため、沖縄や韓国の米軍基地だけを使っていると中国に勝てない可能性がある。そのため、アメリカ領であるグアム島(フィリピンの東方のマリアナ諸島の一つ.現在も米国領)など中国から遠いところにある基地から出撃し、中国まで飛行して爆撃できる長距離型の戦闘機を増やす必要がある、という主旨の主張がなされた。

 沖縄や韓国の米軍基地を使わない理由がミサイル精度との関係になっているが、そのほかに、沖縄や韓国における米軍基地への反対運動の高まりや、日本や韓国を今後長い目で見た場合、アメリカの戦略に協力しない両国の世論の動向を考慮してのことでなかろうか.

 また同様に、これまで米軍の主力だった大型の航空母艦も精度の高いミサイル攻撃を受けやすくなっているため、今後は大型空母・戦艦の建造は宿小し、代わりに小型で高速の戦艦を重視することや、同時に2つの戦争を別々に戦う両面作戦に備えていた従来の方針をやめることなども盛り込まれた。



●二枚舌外交だったクリントン

 アメリカが中国を冷戦後の敵として設定したのは、これが初めてではない。クリントン政権時代の1996年には、アメリカは中国を仮想敵とするかたちに日米安保体制を再編し、日本の軍事力を高めようとした。しかし、日本側では「中国との対立は避けた方がいい」という意志が強かった上、韓国や東南アジアなどの近隣諸国も、日本の軍事力強化を「日本帝国の復活につながる」として反対したため、構想は立ち消えとなった。その後クリントン政権は作戦を変え、日中以外のアジア諸国に対して「米軍が東アジアに駐留するのは、日本と中国の両方を牽制し続けるため」と説明しつつ、冷戦後の一時期縮小していた東南アジア諸国などとの共同軍事演習を復活させた。

 アメリカはここ数年、軍事的には中国包囲網を作りながらも、経済的には中国での投資や販売を増やしている多数のアメリカ系企業の安全確保の必要があり、敵視と友好関係の両方を織り混ぜて、複雑な外交を展開していた。しかし,クリントンが中国を敵視するそぶりを全く見せなかったのに対し、現ブッシュ政権はもっとあからさまで,中国敵視を隠そうとしない点が、前政権との大きな違いである。


●わずか10日後の4月1日に起きた軍用機衝突

 アメリカのラムズフェルド国防長官が、これからは中国を最大の敵とみなす、と大統領に説明してからわずか10日後の4月1日に、中国南部の領海ぎりぎりのところで、中国軍の交信電波などを傍受しながら飛んでいたアメリカ海軍の偵察機が、中国軍の戦闘機と空中衝突し、偵察機は海南島の空港に不時着し、中国軍機は墜落してパイロットは行方不明となる事件が起きた。

 偵察機の乗員は約2週間にわたって中国側に留め置かれ、アメリカでは反中国の報道が噴出した。中国では「偵察機は領空侵犯していた」という報道が展開され、反米の世論が強まり、米国防長官が大統領の前で描いたシナリオどおり、米中が敵対するかたちとなった。

 米軍の発表によると、中国軍の戦闘機は以前にも米軍の偵察機に接近する挑発飛行をしていたというが、米軍機が大型で低速のプロペラ機で、中国機が速度を落としにくいジェット戦闘機だったことから、米軍機が意外な方向転換をすれば中国機は避けきれず、中国側のみの挑発から発生した事件ではない可能性もある。

 この後、4月下旬には、ブッシュ大統領が米テレビのインタビューで、中国が台湾を攻撃した場合「どんな手段をとっても断固台湾を防衛する」と答え、「台湾防衛に対して曖昧な態度をとるのが良いとしてきた従来のアメリカの政策を越えた」と報じられた。また、その直後にはブッシュ政権は、アメリカがこれまで台湾に売ることを控えてきた比較的新型の潜水艦8隻などを、台湾に売る決定を下した。


●中国はどの程度脅威になるか

 こうした流れから、アメリカが中国敵視政策を強めているのが分かるが、そ
こで問題となるのが「中国は、日本を含む周辺諸国やアメリカにとって、どの
程度脅威なのか」ということである。

 6月,中国は上海に中央アジア5カ国の首脳を集め、中国と中央アジアとの関係を強化し、協力してイスラム原理主義闘争の鎮圧する「上海協力機構」の会合を開いた。この機構には新たにウズベキスタンが加盟した。またアメリカが経済制裁を加えているミャンマーに経済支援をおこなったり,フィジーなど太平洋諸島にも経済支援をおこなっている.世界的な中国の影響力拡大が急ピッチで進んでいることは,近年の際立った特色となっている.これもアメリカには面白くない.また特に近年経済成長を伸ばしている中国が,日本に代わってアジアの経済支配を狙っていることにも重大な関心を払っており,最近の円安が130円台にのせてきてもアメリカがこれを黙認しているのは,日本経済が没落してしまったら,アメリカの東アジア戦略に支障がきたしてしまうことと関係があるからだろう.

 中国は、台湾にとっては明らかな脅威だ。台湾の人々が自力で築いた繁栄した民主主義体制に対して「中国には、場合によってはそれを壊す権利がある」と主張している。中国の政治体制は共産党の一党独裁制である.
 またチベットに対しても、インドネシアが東チモールに対して行ったような、国内植民地としての圧政(経済開発を進める一方で自治要求を潰し、本土からの移民を大量流入させて、地元の人々を少数派にしてしまう政策)を行っていて国際的な批判を受けている。南沙群島の領土権争いでも、中国は東南アジア諸国(ヴェトナム.フィリピンなど )を威圧する態度が目立ち、周辺国の警戒感をあおっている。

 
 中国が今後、さらに強大な国となったとき、周辺国に対してどのような態度をとるのか、まだ予測がつかない部分が大きい。明・清までの昔の中華帝国を継承するような振る舞いを行うだろうとの予測もあり、これが正しいとすれば、強大化した中国は、日本や韓国、東南アジア諸国を対等な存在とみなさず、見下して扱う可能性が大きい。その場合、アメリカが中国に対抗していた方が、日本・韓国や東南アジア諸国などにとっては都合が良いということになる。


●知らないうちに巻き込まれかねない日本

 懸念されるのは、最近のアメリカのやり方は、アジア諸国のために中国を牽制するのが目的ではなく、アメリカの軍部が勢力を維持拡大するために米国内の政治を動かし、中国を敵に仕立てようとする意図が見え隠れしていることである。アメリカ軍は日本人の多くが知らないうちに、日本も「第二次冷戦」に巻き込み始めている。
 しかし、日本ではこうした懸念について、あまり国内で報じられず、語られていない。むしろアメリカを信頼しきった新聞の論調が目立つ。能天気である.外交というものは権謀術数が渦巻く国家のサバイバルゲームであるのに、アメリカが日本を巻き込んで新しい冷戦を始めようとしてことに,多くの日本人は気づいていない。一方,9月の米国同時テロ以来,アメリカでは愛国心と好戦的な風潮が広まり、2002年は「戦争の年」となるというブッシュの発言にも米国のマスコミも当然のなりゆきとみている。

 今後,外交が国家の存亡にかかわってこよう。しかし今の日本は、無知なまま戦争に巻き込まれ、致命的な結果となる可能性があるように思えてならない、日本は経済のみならず政治の面でも影が薄くなっている.日本政府には,国際戦略という指針がまるで欠けているし,外交方針も場当たり的である.







カルメンチャキ |MAIL

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