観能雑感
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2007年03月29日(木) 読売日本交響楽団 第458回定期演奏会 

読売日本交響楽団 第458回定期演奏会 サントリーホール PM7:00〜

 以前からずっと行きたいと切望していた読響の定期公演。読響の公演はどれも聴きに行きたいと思わせるプログラムで気にはなりつつも、これまでは日程的に調整が難しく、諦めていた。
 桜が満開の六本木。恥ずかしながらサントリーホールは今回が初めて。いかに貧乏かが解る。一階席後列ほぼ中央。B席だが最良のA席のすぐ後ろで場所は悪くない。オケの演奏を一階席で聴くのも考えてみればこれが初めて。貧乏の度合いが知れようと言うものである。当然のことながら音響が良く座席もゆったり。
 初めての定期公演が9年間常任を勤めたアルブレヒトの常任指揮者としては最後の公演。いろいろ感慨深い。

マーラー 『交響曲第9番』ニ長調
第1楽章 アンダンテ・コモド 二長調
第2楽章 「緩やかなレントラー風のテンポで」ハ長調
第3楽章 ロンド・ブルレスケ、アレグロ・アッサイ イ短調
第4楽章 アダージョ 変ニ長調

指揮 ゲルブ・アルブレヒト

 手元にあるバルビローリ指揮ベルリン・フィルの演奏では、体温と同じ温度の水にたゆたっているような印象の第1楽章だが、今日の演奏はもっとひんやりとした感触。出だしのホルンが少々もたついた。第2楽章は軽やかだが歯切れの良さは今ひとつ。第3楽章は狂乱よりは疾走感重視で終盤のアッチェレランドは急激。ここまでは決して悪い演奏ではないが、今ひとつの感が否めず、少なくとも自分の好みではないと思っていた。しかし第4楽章でそれら全てが帳消しになった。劇的に神聖、というのではない。普段見慣れた風景がこの上も無く美しく見えると言うのだろうか。一言で表現するなら「浄化」であった。心のなかに浮かんだ風景は暑くも無く寒くもない、暖かな日差しの中、しっぽの生えた最愛の存在が庭でウトウトしたり、毛繕いをしている姿だった。もう二度と見ることのない、しかし確かな幸福と安らぎを感じる光景。これまで若干ちぐはぐだったオケと指揮者の意図が、ようやく合致した感じ。生と死の境は実は極めて曖昧なのではないか、そして今目の前にある死は、決して悲しいことではないのだと、そんな風に感じながら静かに終曲。あらゆる種類の舞台でこのように心動かされたのは久し振りのこと。聴きに行ってよかった。

 読響がアルブレヒトと共に過したこの9年は何物にも変えがたい、得難い年月だったと思う。今後アルブレヒトは読響初の桂冠指揮者になるとのこと。まずはお疲れさまでした。

 


こぎつね丸