2018年07月20日(金) |
覆面企画8後書き(3) |
引き続き、覆面企画8の後書き(その3)です。
■あなたの作品だと推理された作品はありましたか?
02 月下鴨川、モノノケ踊りて、絵師が狩る。(2票)(正解:糸さん)
大好きなお話なので、嬉しいです! こんな『書籍化間違いなし』みたいなクオリティの作品を私が書いたと思ってもらえたなんて、恐れ多くも、光栄です!
他に、ファースト推理や途中経過では、
07 迷い子の手 (正解:はなふじマディ子さん)
もあちこちで候補に上がっていたようですが、最終結果では消えていました。
いずれの作品も、読み手としての私が狂喜乱舞するツボ作品で、書き手としての私にとっては書きたいけど書けない素敵作品でした。 ありがとうございます!
あと、盲管さんが、私が07を書いたら構成が違ったんじゃないかとおっしゃってましたが、自分でもそう思いました。 私だったら、たぶん、最後にもう一度、異世界パートに戻るでしょう。 私には書けない、思いつけない、思い切ったアクロバティックな構成だと思いました。 あと、私だったら、第一場から第二場にかけてのダルメイの立場の変遷を、『それからダルメイは〜』と時系列順に言葉で説明しちゃって、塔にいるダルメイに師匠が試練を持ちかけるところから次の場面を始めちゃって、ああいうダイナミックな場面転換はしなかったでしょう。 私より映像的・映画的な手法だと思いました。
■あなたの作品が他の方の作品だと推理された作者さんはいましたか?
私の作品の書き手だと思われた他の作者さんってことですよね? 上↑の02の作者の糸さん。 ファーストで3票、最終で1票入ってました。 ファースト推理では、はなふじマディ子さんのお名前も上がっていましたが、こちらも、最終結果では、いなくなっていました。
私の作品を書いたと思われたのも、私がその人の作品を書いたを思われたのも、両方、10人中でこのお二人だけなので、皆さんの頭の中でカテゴリーが同じ(『異世界ファンタジー書き』クラスタ?)なのでしょうか。光栄です。 実は自分でも、恐れ多いことながら、ブロックの顔ぶれを見た時に、かろうじて少し迷ってもらえるとしたらこのお二人かも……と思いました(^^ゞ
■推理してみて、いかがでしたか?
楽しかったです! 前回くらいから、ツイッターでわいわい情報交換する楽しみも増えて、探偵業がますます楽しくなりました。 あと、今回は、前回までみんなのフェイクがどんどんエスカレートしてテクニックを極めつくしてしまったせいか、歴戦の方でも、フェイクのために小細工をする人が減って、目立つ特徴を消すくらいで、普段と違うジャンルや傾向にチャレンジするという正統的な方向に回帰してたような気がします。
■あなたの正解率、どのくらいでしたか?
自ブロック(自作除く)含めて約86% 自ブロックを除くと83%くらいかな?
A〜Cブロックはパーフェクト達成だったのに、Dブロックでがくっと落としました(T_T)
■この企画に参加して、改めて気づいたことはありますか?
毎回改めて気づいているんですが、人様の様々な感性やテクニックがすごい。 自分には思いつかない展開、自分には書けない文章……。 自分とは違う、自分には出来ない、いろんな書き方が存在して、それを自在に操る人たちがいることの驚異。
あと、これも毎回書いてるけど、人の好みは様々ってこと。 同じ作品でも人によって好き嫌いがあったり、正反対の解釈があったり、同じ作品を好きな人でも、どうして好きかとか、どの部分が好きかが違ったり……。 どうせ万人に好かれる作品も万人に嫌われる作品もないなら、一人二人の低評価を恐れる必要はないし、みんな自分の好きなように書けばいいよね! って、毎回改めて思います。
また、一人で読んだ時にさほど印象に残らなかったり、いまいち理解が及ばなかった作品も、他の人の感想を読んでその魅力に気付かされたり、意味がわかると深かったりして、自分の好みの偏りや読み込みの浅さに気づいたりするのも、大勢で同じ作品を読んで感想を言い合う企画ならではです。
■参加作品の中で印象深い作品をあげてください。
主に探偵として企画に参加しているので、推理で苦労したブロックにあった作品のほうが印象に残りやすいですね。 特に最後の最後までさんざん迷ったような作品は、やっぱり印象に残りますね……。 E05『キズアト』とE06『幕張でバーチャルアイドルミゾレと握手』とか。 しかも、二作ともすごく好みの作品だったので、推理のために舐めるように読むのが何度でも楽しくて、お得でした!
あと、推理では全然迷わなかったけど、一読した瞬間、あまりのツボ直撃に衝撃を受けた、 A07『最果ての巫女』。 企画開始前に初参加の三樹さんのサイトを偵察に行ったら、あまりに好みの作風だったので、浮かれるあまり意気込みの『好きなWEB小説』に挙げてしまったくらいで、だから覆面作品にも期待していたら、期待通り、いや、それ以上のツボ作品が出てきて、読んだ瞬間、作者を確信しました。
そして、これも全然迷わなかったけど、一読した瞬間、『盲管さんがこんなものを!?』と『こんなの盲管さんしか書けない!』との両立にがつんと衝撃を受けた、 B10『ローマでも長安でも洛陽でもない、ある都の休日』。
そして、最後の最後に笑かしてくれた E10『夢の異世界ダンジョンへGO!』。
■参加作品の中で印象深いタイトルの作品をあげてください。
B10『ローマでも長安でも洛陽でもない、ある都の休日』 これが盲管さん作品のタイトルであることが、まず衝撃的!
C02『月下鴨川、モノノケ踊りて、絵師が狩る。』 詩情と幻想とユーモアとケレン味が感じらるし、『京都が舞台・モノノケもので、主人公は絵師』というセールスポイントが具体的に提示されてて興味を引く。
E01『銀の御手のサジタリウス』 ファンタジーの香気があるし、カッコいい!
E02『五月の庭、蕾の君は目を閉じたまま』 詩のようで綺麗だしオシャレ。
E06『幕張でバーチャルアイドルミゾレと握手』 これは興味を引かれずにはいられない……!
■参加作品の中で面白かった3作品&一言感想、お願いします。
全体で3作品なんて少なすぎて無理! ……なので、各ブロックから特に好みの作品を、なるべく1作、どうしても好き作品が多すぎるブロックだけ最大3作以内という縛りでいきます。 あと、感想がぜんぜん一言じゃないです。
覆面企画に参加してない人も興味を持ってくれたら読みに行けるように、作品へのリンクも貼りましたが、若干ネタバレあるかも……? 一応、あまり具体的には書かないようにしたつもりですが、ネタバレ度が高そうなものには注意書き付けました。
Aブロック
07『最果ての巫女』 上↑でも挙げたけど、とにかく好み。内容・設定も萌えるし、言葉が美しい……。 こういう、ちょっと古風で装飾的な美文や、そういう耽美な文章で描かれるに相応しい物語が、ほんとに好きなんです。 物語と、それを描き出すための文章が見事に調和していて、うっとりします。 ごちそうさまでした!
Bブロック
02『フーガには二つ星を連ねて』 言葉選びのセンスがすごく好き。隅々まで、言葉がファンタジーしてる……。 『ジュールノア』とか『古窪』とか、音の響きや字面がいちいち雰囲気あって、古い森の傍の鄙びた村の少し湿った空気が文章から立ち上るよう。 特に、最後の方の『やけに甘くリンゴの花が香る日だった。』から『 白いはなびらがこぼれるように頬を伝った。』に至る一連の描写は圧巻で、息を詰めるように読んで幻想の香りを味わいました。
10『ローマでも長安でも洛陽でもない、ある都の休日』 なんとも格調高い異世界転移・現代知識チートものにして、しみじみと人生の哀歓を描き出す奥深い文学……! 古代中国という舞台に持ち込まれた関西弁や大阪感が醸し出す軽やかなおかしみ、全くタイプの違う人間でも共感を誘われずにはいられない馬やんの哀愁ある人物造形(遺書まで書いた出立前の妻への態度、元同僚を庇う気概……なんていい人なんだ!(T_T))、清涼感のあるチャーミングなヒロイン、二人の友情の爽やかさ、人の縁の不思議さ、人生の儚さ、ほろ苦さ……いろんなものが短い物語に詰め込まれてます。 盲管さんはこれまでも毎回名作を書いてるけど、特に今回のこれって、覆面企画がなければ生まれなかった作品なのでは? 盲管さんにこれを書かせた覆面企画って、すごいのでは? この作品はもう、存在自体が、覆面企画の伝説となるでしょう。
Cブロック 02『月下鴨川、モノノケ踊りて、絵師が狩る。』 これ、絶対連作化して書籍化するに違いない……と思いながら読みました。 四季折々の京都の風情、四季折々の京都グルメを添えつつ、小さな事件を、100とは言わないまでも、いくつも解決しながら、幼馴染の二人の微妙な関係が少〜しずつ変わっていくんですよね!? 事情を知っているらしい同僚も、途中で登場してくるんですよね? きっと、二人の家系の過去の因縁が少しずつ明かされたり解きほぐされたり、そんな中で七森さんの心境の変化がほんのりと描かれて、最後の方では、もういちど絵を描こうかと思い始めたりするんですよね? ……勝手にスミマセン(^^ゞ それほど、単にオンノベ短編として質が高いだけでなく、長編化の方向性や商業化した時のセールスポイントまで妄想できてしまう、キャッチーな作品でした。 後書きによると、もともと長編用の構想があって、実際に長編化中とのことで、楽しみです! 07『迷い子の手』 これも、文章にファンタジーの香気があるタイプの作品で、もう、好き……! 特に、『旅人には旅人の暦があるものなのか、』から始まる一連の祝祭シーンがいかにも格調高い異世界ファンタジーでわくわくしていたところへ、唐突に来た塔のシーンへの場面転換の、読み手も一緒に虚空に放り出されて本当に視界が回るような見事さ。 この映像的な場面転換を文章で描き出すって、すごくないですか? さらにもう一度来る、思い掛けない大きな場面転換と併せて、初読時、鳥肌が立ちました。
Dブロック
06 ヴォストーク・デイ <ネタバレ?注意> のんびりしたですます調で描かれる日常から壮大なディザスターパニックへの静かな移行が、そくそくと身に迫って、息を呑むようでした。 休日出勤した会社で、同僚と 、あくまで日常の延長線上の言葉を交わしているうちに、窓の外にはいつのまにか荘厳なまでの破滅が忍び寄っていて、淡々と語られる事態の迫力が半端ないし、そんな異常な状況なのに、二人の会話や行動が会社で台風対策してるみたいな身近なノリなのが妙にリアリティがあって、その落差が、ほんとに怖い。 最後の最後まで、たまたま台風で帰れなくなって一緒に会社に閉じ込められちゃった同僚男女二人……特に親しかったわけでもない相手だけど、停電の中で助け合って連体感が生まれたり、もしかして恋だって芽生えちゃうかも?……みたいな、日常の中のちょっとしたアクシデント的な雰囲気のままで、唐突にペンギン、オーロラ……。 後書きによると、文字数が足りなかったせいで気象災害が起こった理由が削られていたらしいけど、そこがまた理不尽で怖かったです。
10『吾輩はルンタくんである』 可愛くて楽しかった!
Eブロック
01『銀の御手のサジタリウス』 これも、言葉のセンスが素晴らしいファンタジー。 ただストーリーが伝わればいいんじゃなく、隅々にいたるまで『この言葉で、この文章で書かねばならない』という、文章そのもの、言葉そのもので作品世界を作り上げる描き方をしていて、選びぬかれた単語や表現のひとつひとつにファンタジー魂を感じます。
05『キズアト』 <ネタバレ注意> これは良いディストピア……! 前半の、海外YA文学みたいな雰囲気もいいし、先生との禁断の関係を思わせるシーンはなかなかドキっとするし、そこからの、ちょっとギャグかなってくらい唐突なアクション全開シーンも痛快でカッコいいし(このシーン、クレアちゃん、リボン解けた制服姿なんですよね……萌える!)、超戦士として爆誕したクレアちゃんの颯爽としたたくましさ(まさにクーーール!)、特に、ラストのセリフが爽快! イメージとしては、鉄砲担いだ薬師丸ひろ子(@セーラー服と機関銃)的な……? 古くてゴメンナサイ(^^ゞ
06『幕張でバーチャルアイドルミゾレと握手』 これはすごい。近未来には本当にこういう玩具やイベントがありそう。 そして、おじさんが可愛い!
10夢の異世界ダンジョンへGO! 笑った笑った……(笑) ハンドルネームのセンスもいいし(みんなネトゲとかにほんとにいそう)、あと、キャラたちが明るく元気で楽しそうなのが良かったです。
あっ、Eブロックだけ作品数が超過してしまった! これでも我慢して絞ったんですが、やっぱり、推理で苦労したブロックの作品は印象に残りやすいらしくて、つい……。 Eブロックでは、他に、07『楽園の手』に出てくる『手』が、やけに美味しそうだったので、『美味しそうだったで賞』を進呈したいです。
しかし、こうして挙げてみると、私の好みは、はっきりしてますね。 美文で描かれた幻想的なファンタジーが、無条件で好きなんですね。
以上、後書きでした。
ご一緒してくださった皆さま、楽しい時間をありがとうございました! そして、長期間に渡る大規模で手間のかかる企画を運営してくださった主催様、技術面でご尽力くださったというだもさん、おかげで本当に楽しく遊ばせていただきました。 感謝してもしきれません。ありがとうございました!
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