この週末には桜は散ってしまうだろうと思っていましたが、今年の桜(東京周辺の)は、しぶといですね〜。 咲き始めから散り終わるまでが長い! 咲いてから寒くなったのが良かったですね。 早く咲き始めた時には、今年は絶対入学式に桜は無理だと思ったのに、学校によっては間に合ったみたい。
というわけで、この辺ではソメイヨシノも場所によってはまだちらほらと残っていますが、今、綺麗なのは山桜。 花期はほぼ同じなのですが、山桜の場合、花が散りかけても葉っぱが綺麗なので、ソメイヨシノより長く楽しめるのです。 ソメイヨシノは、花が散り終わる頃に出てくる葉が無骨な感じで、その頃になると急に野暮ったくなってしまうのですが、山桜は、色とりどりの若葉の色合いが繊細で、花が残り少なくなると同時に若葉が伸びてゆくことで徐々にその色合いが移り変わってゆく様に、見飽きない趣があります。
山桜って、なんでこんなに一本一本、葉っぱや花の色が違うんだろう。 白い花、薄紅の花、黄緑の葉、海老茶の葉、赤紫の葉。その、いろんな組み合わせ。 良く考えてみると不思議です。 同じ山に、いろんな品種(?)の山桜が混ざって生えてるのは、なぜ? 普通、植物って、同じ場所には同じ品種があるじゃないですか。 なのに、山桜は、すぐ隣に、白い花と黄緑の葉っぱの木と、薄紅の花に海老茶の葉っぱの木が並んでいたりする。 誰も足を踏み入れないような雑木山のてっぺんの山桜なんか、誰かが植えたわけでもないと思うんですけど、自然といろんな品種が生えるんでしょうか。 小鳥がいろんなところから種を運んでくるから?
通勤途中の沿道の低い山のてっぺん近くに、一本の山桜の木があります。 いえ、山桜の木はどの山にもいっぱいあるんだけど、その山の、その桜だけ、なぜか特別目だって、私は毎年注目しているのです。 その山は、他の山が雑木中心なのに比べて、植林された杉がメインの山なので、その、杉の緑の中に一本だけ混ざって咲いているその桜が、すごく目立つのです。 しかも、その桜は、まわりの山の他の桜に比べて、一際色が鮮やかなのです。 そんなに濃い色ではなく、ややサーモンオレンジがかった、白に近い薄ピンクなのですが、澄んだ、鮮烈な発色で、花どきには、まるでそこだけぱーっと光が当たってるよう。 花が咲いていない時は、全くそこに桜の木があるなんて分からないから、花が咲き始めると、ある日、突然、そこに光の塊が現れたみたいで、とても印象的です。
そんなわけで、毎年注目しているその桜なんですが、何しろ通勤途中の道から運転中に見える桜なので、車を止めてじっくり見るわけにもいかず、沿道の山の上にあって、近くに寄ることも出来ないから、なんだか、高山に咲く幻の花のような気がします。 高い山ではないんだけど、沿道から見る限り、そっちに入っていける道は無さそうだし、もしかして、こちら側から入る道はなくても別方向から入る道はあるのかもしれないけど(可能性は低いと思うけど)、反対側からでは、どれがその山か分からなくて、やっぱり、その桜の近くには、たどり着けないでしょう。
そんなわけで、その桜は、私にとって、近くに見えるのに決してたどり着けない、幻の桜です。 何か神秘的な感じさえします。何か、そこに別の世界があるみたいな。 あの木の下にたどり着ければ、願いが叶ったり、普段は見えないものに会えたり、生命の神秘に触れられたりするんじゃないか、みたいな。 今日も、山の上で、そこだけぱっと明るんで、輝いています。 いつか、一度、あの木の下に行って見たいです。
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