2004年10月22日(金)


二隻の舟
                  中島みゆき

時は全てを連れてゆくものらしい
なのにどうして寂しさを置き忘れてゆくの
いくつになれば人懐かしさを
うまく捨てられるようになるの

難しいこと望んじゃいない
有り得ないこと望んじゃいない
時よ最後に残してくれるなら
寂しさの分だけ愚かさをください

おまえとわたしは たとえば二隻の舟
暗い海を渡ってゆくひとつひとつの舟
互いの姿は波に隔てられても
同じ歌を歌いながらゆく二隻の舟

※ 時流を泳ぐ海鳥たちは
   むごい摂理をささやくばかり
   いつかちぎれる絆 見たさに
   高く高く高く

敢えなくわたしが波に砕ける日には
どこかでおまえの舟がかすかにきしむだろう
それだけのことでわたしは海をゆけるよ
たとえ舫い綱は切れて嵐に飲まれても

※ くりかえし

おまえの悲鳴が胸に聞こえてくるよ
越えてゆけと叫ぶ声が ゆくてを照らすよ
きこえてくるよ どんな時も

おまえの悲鳴が胸に聞こえてくるよ
越えてゆけと叫ぶ声が ゆくてを照らす

難しいこと望んじゃいない
有り得ないこと望んじゃいないのに

風は強く波は高く 闇は深く星も見えない
風は強く波は高く 暗い海は果てるともなく
風の中で波の中で たかが愛は木の葉のように

わたしたちは二隻の舟 ひとつずつの そしてひとつの
わたしたちは二隻の舟 ひとつずつの そしてひとつの
わたしたちは二隻の舟 ひとつずつの そしてひとつの
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