フェイド・アウト - 2003年04月15日(火) 最終の市電で帰ろうと4丁目の交差点を渡っていたら、 たまに同じ電車で見かける盲目の男性が、やはり同じように 電停へと向かうために前を横切ろうとしているのが見えた。 カンカンカン、と白い杖で周囲をあたふたと探りながら どんどんと車道の方へ行ってしまうので 「電車ですかー?そっちじゃないです!」と声をかけ、 少し袖に触れる感じで方向を教えた。 もちろんそのまま一緒に列に並ぶことになるわけなのだが、 彼は私にやたら気をつかって、というか、 「他人どうしの間にあると私が思っている」距離を突き破って 大声で私にべらべらと話しかけ続けた。 「イメージがわいた!」と突然言うので、 「え?」というと「頭が大きい。」という。 「私がですか?」というと「そう」というので 「まあ、そうかもしれないです」と答えた。 なんだかわからないけど言われていることに対して 何も感じなかった。 でも楽しい気持ちにはならなかった。 その人はまるで、サード・アイで私を見るみたいに、 じーっと顔をこちらに向け、 私がどんな人かというのを一方的に当てようとし続けた。 そのたびに私は 「そうですね」「そうかもしれない」とか 「いや、それはちがうかも」とか返事をするしかなかった。 彼はこちらの気持ちはおかまいなしに、 その場にいた全員に聞こえるような 大声で話し続けるので、どうしたらいいのかわからなくなり、 最終電車が到着して列が動き出すと同時に 人混みに紛れて彼のそばを離れてしまった。 吊革につかまりながら、 ぐるぐるといろいろな思いが頭の中をめぐって、 なんだか悲しいような複雑な気持ちになり、 そうしているうちにあっという間に家についた。 -
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