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■ ばばちゃん11・「最期」
12日、仕事を終えて病院に行く。 午後6時すぎ。 オーバーテーブルに夕食がおいてあったけれど、おかんはいない。 ちょうど入れ違いで家に帰っていたらしい。 ばばちゃんは痰がからんで苦しそうに息をしている。 ほとんど肩で息をしている状態なのだけど、どうしても苦しくて嫌だということで吸引はしないでいた。 更「おばあちゃん、具合は?」 ば「悪い」 更「ご飯食べられそう?」 ば「いらない。下げていいよ」 更「あいよ。」
ベッドサイドに腰掛けて、手をにぎって話をする。 他愛もない話。 昨日はこんなに悪くなかったのにな、と思いながら。 一緒に行った弟は、ばばちゃんの状態の悪さに圧倒されて壁に寄りかかって無言でいる。 話しかけなきゃ口を開かない。 弟に話を振りながらばばちゃんに話しかける。 この様子じゃ今月いっぱいはもたないなぁ。。。 そんな風に思いながら。
7時半頃おかんが来て交替する。 更「明日は(仕事)半日だし、今夜オレが付き添う?」 おかん「だったら明日お願い。今日はいいよ」 更「りょーかい」
家に帰るとおとうが台所に立ってて、でもここのところ片付けをしてなかったから洗い物が山になってて怒られた。 とりあえず粗い物して、鶏肉の唐揚げを作って夕食を食べ終えたのが9時半過ぎ。 さすがに疲れた。 で、一番風呂いただき。 湯船に使って一息ついたところでおとうの声が聞こえた。
おとう「病院行くぞ」
酒を飲んだおとうの代わりに弟の運転で病院に急ぐ。 病室のドアを開けるとばばちゃんが寝てた。 「なんだ、落ち着いてるみたいじゃん」と言いかけておかんの真っ赤な目に気付いた。 一瞬、意味が分からなかった。 慌ててばばちゃんに視線をもどすと穏やかに、息を引き取っていた。 22時07分。享年71歳。 結局、最後の最後には間に合わなかった。 あんなに泣くおかんの姿、初めて見た。
主治医の説明の後、エンジェルケア(死後の処置)を一緒にさせてもらった。 初めてのエンジェルケアが身内だなんて、なんか皮肉な気がした。 でも、いままで苦しんでたばばちゃんの身体を、きれいしにて送り出してあげたかった。 泣きながらだったから、かえって看護婦さんの邪魔しちゃったかもしれないけれど。
葬儀社の車にナビとして乗り、ばばちゃんと一緒にばばちゃんの家に帰った。 布団を敷いてばばちゃんを休ませ、オレらもばばちゃんちに泊まった。
◆ばばちゃん12・「お通夜。葬儀」 ばばちゃんちは建物が古いせいもあり、寒かった。 コタツで足を温めながら寝たくらい。 おとうは寒くて寝付けず、折を見ては線香をあげていた。
朝8時。 クリニックに電話して事情を話しお休みをもらう。 この日は一日パシリで買い物に飛び回っていた。 お寺さんの都合でお通夜は8時からになる。 無事入棺を済ませ、通夜振る舞いでもいろいろと走り回る。 この日はおとうの弟さん一家も泊まるため、オレはうちに帰って寝た。
今朝は5時半に起こされる。 着物の着付けを近所の美容師さんに頼んだおかんが着物をとりに戻った時に、うまく玄関の鍵が開かなかったから。 で、寝なおして6時半に起きなければいけないのを寝過ごす。 7時におとうから電話を受け慌てて着替える。 この朝は本当に寒かった。 霜が下りていて、庭の木が真っ白だった。
9時。 真っ白に霜の降りた朝、ばばちゃんは旅立った。
灰寄席での葬儀委員長M沢さんの挨拶。 (葬儀委員長はばばちゃんちのお向かいさん。) ばばちゃんは、外泊でうちに来ていた間、一度着替えを取りに、とばばちゃんちに戻っていたことがあった。 3時間くらい、ばばちゃんを一人にしたときだと思うけれど、M沢さんに挨拶にいっていたらしい。 「今までありがとう。もうここに帰ってくることはないと思うから」 ・・・と。 オレたちの前では一度もそんな素振り見せたことなかったのに。 弱気な姿、見せたことなかったのに。 病気のこと、予後のこと、ばばちゃんには話さなかったけど、ばばちゃんの体のことはばばちゃんが一番よく分かってたんだなぁ。 ばばちゃんが亡くなって主治医の説明を受けたとき、少し泣いた。 でも、この二日自分でも驚くくらい落ち着いていた。 でも、それは忙しくて考える暇がなかったのかもしれない。 M沢さんのその話を聞いて、二日分泣けた。
明日から、ばばちゃんの家は借家だから整理で忙しくなる。 また、泣いていられない日が続きそうだ。
2003年11月14日(金)
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