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■ ピアスか、口紅か
日常的にお化粧はしないが、日常的にアクセサリーを身につける。 女性として、どちらが好ましい身だしなみなのかは分からないが、 ちょいとそこまでという時、口紅は塗らずとも、ピアスは付ける。
それが私のささやかな習慣であり、個人的なルールである。 他人にとっては瑣末なことでも、私にとっては必要なもの。 気持ちよく生活するための、そして安心して生きるための儀式のようなもの。
もう10年近くも前になる。 大学生になったばかりで、女の子はこぞってメイクに力を込めた。 もっと魅力的にみせるため、もっと美しくみせるために、女の子は ぴかぴかの素肌にファンデーションを塗り、桜色の頬にチークをのせた。 あの頃がいちばん、肌本来の美しさ(若さとも云う)を持っていたなんて事実は、 当時はぜんぜん理解できなかった。それは、歳を重ねて初めてわかる、真実。
あの頃、うちによく女の子が泊まりに来た。 「お腹すいたから、コンビニでおでんでも買ってこよーよ」 誰かが提案し、私たちは賛成して身支度を始めた冬の真夜中。 彼女たちは一斉にパウダーをはたき、口紅を塗った。
私は、帰宅したときに外したピアスをテーブルの上からとって、もう一度 ピアスホールに通した。そして、彼女たちがめかしこんでいるのを眺める。 「マミコ、おもしろいよね。口紅は塗らないのに、ピアスは付けるんだ」
あのとき、ひとりの女ともだちが、心底おもしろそうに云ったことを覚えている。 私にとっては、口紅を塗りなおしている彼女たちの方が心外だった。 さっきお風呂に入ったばかりなのに、と思った。そのままでもきれいなのに、とも。 その彼女も、この春ママになる。時間とは、そういうものだ。
何かにしがみついて、あがなって生きていこうなんて思わない。 私はただ、日常の中の、私だけのささやかなルールを信じているのだ。
2004年01月12日(月)
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