|
|
■■■
■■
■ 砂漠で生きるドイツ女のように
アメリカのロードマップを広げていたからだろうか。 『バクダットカフェ』のざらっとした、くすんだ優しい映像が観たくなった。
東から西へ向かうR66、ラスベガスを越えてカリフォルニアへと続く砂漠の道。 その途中のニューベリースプリングという小さな町で、その映画は撮影された。 カメラをこのカフェ一点に据え、特に大きな事件も起こらない、淡々とした映画。 それでも、なぜか懐かしく感じる肌触りが、私はたまらなく好きだ。
イライラをぶちまける女主人のところに転がり込んだ、丸々と太ったドイツ女。 ふたりはすごく対照的ではあるけれど、女、という揺るぎのない共通点がある。 私はそれに、ほっとさせられるのかもしれない。無口だけど、柔らかで、 人をよせつける(美貌とは違う)魅力を持ったドイツ女は、とても素敵だ。
印象的な場面がある。 人口も娯楽も少ない土地で、ギスギスしたバッハしか弾けなかった少年の ピアノが、いつしか、とてもゆったりとした調べになったところ。 あの映画の優しさは、そんな些細な情景にしっくり馴染んでいる。
と、こう書いている間にも我慢しきれなくなり、ホリー・コールのCDをかけた。 "Calling You"は、砂漠の砂が巻き上がる町に住む、それぞれの淋しさを 抱え持った人々が、小さく声を上げて、誰かを呼んでいるような歌だ。 その根底には、常に、人間が生きてゆく強さが流れている。
<< 生真面目なドイツ女の仕事っぷりがほほ笑ましい
2003年11月13日(木)
|
|
|