ムッキーの初老日記
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「匂い」ほど、人の記憶を鮮やかに呼び覚ますものは ないような気がする。
昨日、所用で市内の百貨店に出掛けた。 地元では一番古く、高級品を扱う店だ。 だから滅多に行かない。店内に足を踏み入れたのは5年ぶりだ。 用事をさっさかと済まし、ちょっと散策しようと あるフロアに足を踏み入れた途端、私は奇妙な感覚に襲われた。
化粧品、香水、そしてバッグや靴の革の匂い。 それらが渾然一体となってそのフロアに溢れていた。
いつか嗅いだ、匂いだ。 それも、毎日嗅いでいた匂いだ。
私は一瞬、今どの時代にいるのか解らなくなった。 決して大げさでなく、本当にそんな気がした。 その匂いを嗅いだ途端、私は過去に引き戻された。
大昔。 私もこういう匂いのするフロアで働いていた。 まだとても若く、未熟者で、でも一生懸命生きていた。 大好きだった、同僚や先輩たち。 私の楽しい事も、つらい事も、切ない事も全部 あの時代の、あの売り場にあった。
振り向いたら、みんながいるような気がした。
若き日のきょん、カオリちゃん、マサカズさま 老眼のAちゃん、シャイニング竹内君 飯村氏や、根本チーフ、美容部員のおねえさん達・・・。 初老日記でもお馴染の、私の懐かしい人たち。
みんなあの時のまま、そこにいるような気がして 振り向いてみたけど、もちろん誰もいなかった。
にぎやかな売り場のざわめきを聞きながら、 まるで夢を見ていたように 私は不覚にも泣きそうになった。
◆◇オッサン君の独り言◇◆
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ムッキー
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