ムッキーの初老日記
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2002年11月22日(金) さようなら、さようなら。


昨日、あるエンピツ作家さんの日記を読んだ。
まだ20代の先輩が突然亡くなってしまった、と言う内容で
最近、若い人の突然死が多いなあ、と心が痛んだ。


その直後、古い友人に電話を入れた。
3、4日前に彼女から留守電が入っていたことを思い出したのだ。
彼女とは高校の同級生。めったに会えないが
暑中見舞いや年賀状を交換し、年に数回電話で話す、懐かしい友達だ。


電話に出た彼女は、いつもと変わらない明るい声だった。

「この前は留守電ありがとね。掛けるの遅くなってごめんよ。何かあったか?」

と私が聞くと

「うん・・・。あのね。ビックリしないで聞いて。
実はね、つい10日前にね、うちの弟・・・死んだんだわ。」


「え・・・!」


私は絶句した。


どうして!なんで!
心が叫んだが、言葉にならなかった。


突然死。
独身だった彼は父母と一緒に暮らしていた。
彼は、朝家を出るのが一番遅かった。
みんなが出かけた後、倒れたらしく
夕方、母親が戻ると廊下に倒れて既に亡くなっていたそうだ。

何の前触れもなかったと言う。
ひとつだけ挙げるとしたら、最近仕事が忙しく
残業が多かった事くらいだそうだ。


まだ35歳。


「でね、葬式が済んで、遺品を色々整理してたんだけど
あいつのポケットアルバム見てたら、ムッキーと撮った写真が出てきてね。
覚えてる?ウチに泊まりに来た時に一緒に撮ったでしょう?
あれが出てきて・・・・」


覚えてるよ。
もう15年以上前、私も彼女もまだ独身だった。
彼女の家に泊りがけで遊びに行って、弟と3人で遅くまでゲームをしたね。

明るくて優しい、とってもいい子だった。

「それでね、ああムッキーにもアイツが逝っちゃったこと言わなきゃなって。」

「そうか・・・。」


言葉が出なかった。
なにか言わなくちゃいけないのに、喉の奥に石が詰まってしまったように。

「私が言う事じゃないかも知れんけど
お父さんとお母さん、大事にしてあげて・・・。
○○君の分まで・・・。」

これだけ言うのが精一杯だった。

「うん。ありがとうね。」




電話を切った後も、ずっと彼のことを考えた。
正直に言えば、普段は思い出しもしない存在の「友達の弟」。
たまに電話で「弟元気か?」「うん、変わりないよ」と
安否を確認するだけだった。
でもそれは、元気でいるのが当たり前だったからだ。



「死んだのか。○○。・・・死んだのか。」



まだ10代だった頃の、彼の笑顔を思い出して
私は泣いた。


10年以上会ってなかったのだから、今までと何もかわらない。
でも、何もかわらなく見えても、全く違う。

もう、彼はいない。

どこにもいない。

ぞっとするような寒気と喪失感が私を包んだ。



年を取ると言う事は、どんどん知り合いがいなくなる事だ
と言った母の言葉が、今、実感となって心に突き刺さってきた。



一人の、心優しい青年の冥福を、心より祈ります。









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ムッキー
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