ムッキーの初老日記
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2002年03月28日(木) 呪われた血脈

ずっと恐れていた事が起ころうとしている。


私の母方の家系には「ホクロ」が多い。母自身はそうでもないのだが
叔母や大叔母、祖父や叔父など、みな顔に大小のホクロが点在している。

そして、ホクロだけならまだいいが、大きな「イボ化したホクロ」が
顔にある親戚がやたらと多いのだ。

眉間にある者、鼻の脇にある者、鼻の下にある者。
(イボがある場合、だいたいこの三箇所が多いのは何故だろう。)
あんなところにあったら顔を洗うとき邪魔じゃないのか。
ゴロンゴロンして、洗ってるうちにちぎれてしまいはしないのか。

小学生の頃から、法事などで親戚が一堂に会すたびそう思っていた。

「ねえお母ちゃん、なんで○○おばちゃんや××おじちゃんは
 あんなおっきいイボがあんの?△△おばちゃんなんて鼻の下にあってさ、
 まるでハナクソみたいで変だよね!」

無邪気であるが残酷な小学生の私が母に問うた。

母はクルっと私のほうを向き、真顔でこう言った。


「あんたも大人になったら出来るよ。」


「えっ・・・・・・・・!!」Σ(゜ロ゜)


「○○おばちゃんだってな、若い頃はあんなのなかった。
 小さかったのが年取るごとに大きくなってきて、いつの間にかああなった。
 おまえもホクロが多いのは、こっちの家の血筋だから、
 きっと中年になったらイボになる。」


その時から私は、いつか大きくなるであろうホクロに怯えた。

見た目がと言うよりも「取れそうで怖い」のだ。
洗顔、入浴、化粧。赤ん坊や子供の好奇心。
もしギューっと引っ張られたらどうする!?


イボには危険がいっぱいだ!


10代半ばからは、ちょっと赤っぽいニキビが出来るたび
「イボになるのでは」とハラハラした。

傍からは楽しい青春時代をエンジョイしているように見えても、
実は人知れず「呪われた血脈」に怯えていたのだ。

ニキビが「青春のシンボル」からただの「吹き出物」に
転落する年頃になってもハラハラは続いた。いや結婚してからもだ。
オットさえ知らない妻の心の闇・・・。


だが30代半ばになっても、イボは一向に出来なかった。

なんだ、出来ないじゃないか。母め、あんなこと言っていたいけな子供を
脅かして楽しんでいたに違いない。

顔イボに怯えだして四半世紀。私はやっとその恐怖から逃れられたのだ!

そう、昨日までは・・・・・。


今朝、洗顔後に鏡を見た時、私の目にそれは飛び込んできた。
右の眉毛とこめかみの間に、ポツンと茶色っぽい「吹き出物」のようなもの。

「ニキビ?」と思って鏡に顔を近づけてみた。

ニキビのようでもある。しかし、痛くないのだ。
こんな色でこの大きさのニキビだったら、触ったら痛いはずだ。

これはもしかして!?

ついに来たのかもしれない。今日がXデーなのかもしれない。

私は思いのほか冷静だった。
伊達や酔狂で四半世紀も悩んでいたわけじゃないのだ。

これがイボに成長するか、それとも痛くない吹き出物なのか。
今はまだわからない。もう少し様子を見守ろうと思う。

そしてもしこれがイボであったら、
ちぎれる程痛い思いをする前に、皮膚科に行ってちぎってもらおうと
もう10年も前から心に決めている。


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