ムッキーの初老日記
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ずっと恐れていた事が起ころうとしている。
私の母方の家系には「ホクロ」が多い。母自身はそうでもないのだが 叔母や大叔母、祖父や叔父など、みな顔に大小のホクロが点在している。
そして、ホクロだけならまだいいが、大きな「イボ化したホクロ」が 顔にある親戚がやたらと多いのだ。
眉間にある者、鼻の脇にある者、鼻の下にある者。 (イボがある場合、だいたいこの三箇所が多いのは何故だろう。) あんなところにあったら顔を洗うとき邪魔じゃないのか。 ゴロンゴロンして、洗ってるうちにちぎれてしまいはしないのか。
小学生の頃から、法事などで親戚が一堂に会すたびそう思っていた。
「ねえお母ちゃん、なんで○○おばちゃんや××おじちゃんは あんなおっきいイボがあんの?△△おばちゃんなんて鼻の下にあってさ、 まるでハナクソみたいで変だよね!」
無邪気であるが残酷な小学生の私が母に問うた。
母はクルっと私のほうを向き、真顔でこう言った。
「あんたも大人になったら出来るよ。」
「えっ・・・・・・・・!!」Σ(゜ロ゜)
「○○おばちゃんだってな、若い頃はあんなのなかった。 小さかったのが年取るごとに大きくなってきて、いつの間にかああなった。 おまえもホクロが多いのは、こっちの家の血筋だから、 きっと中年になったらイボになる。」
その時から私は、いつか大きくなるであろうホクロに怯えた。
見た目がと言うよりも「取れそうで怖い」のだ。 洗顔、入浴、化粧。赤ん坊や子供の好奇心。 もしギューっと引っ張られたらどうする!?
イボには危険がいっぱいだ!
10代半ばからは、ちょっと赤っぽいニキビが出来るたび 「イボになるのでは」とハラハラした。
傍からは楽しい青春時代をエンジョイしているように見えても、 実は人知れず「呪われた血脈」に怯えていたのだ。
ニキビが「青春のシンボル」からただの「吹き出物」に 転落する年頃になってもハラハラは続いた。いや結婚してからもだ。 オットさえ知らない妻の心の闇・・・。
だが30代半ばになっても、イボは一向に出来なかった。
なんだ、出来ないじゃないか。母め、あんなこと言っていたいけな子供を 脅かして楽しんでいたに違いない。
顔イボに怯えだして四半世紀。私はやっとその恐怖から逃れられたのだ!
そう、昨日までは・・・・・。
今朝、洗顔後に鏡を見た時、私の目にそれは飛び込んできた。 右の眉毛とこめかみの間に、ポツンと茶色っぽい「吹き出物」のようなもの。
「ニキビ?」と思って鏡に顔を近づけてみた。
ニキビのようでもある。しかし、痛くないのだ。 こんな色でこの大きさのニキビだったら、触ったら痛いはずだ。
これはもしかして!?
ついに来たのかもしれない。今日がXデーなのかもしれない。
私は思いのほか冷静だった。 伊達や酔狂で四半世紀も悩んでいたわけじゃないのだ。
これがイボに成長するか、それとも痛くない吹き出物なのか。 今はまだわからない。もう少し様子を見守ろうと思う。
そしてもしこれがイボであったら、 ちぎれる程痛い思いをする前に、皮膚科に行ってちぎってもらおうと もう10年も前から心に決めている。
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