2002年10月08日(火) |
エンジェル/石田衣良 |
純一が意識を取り戻したとき、自分は何者かに殺害され、埋められていた。純一はそれを空中から見ていた。 死後の純一には殺される前2年間の記憶が全く思い出せない。 なぜ自分は殺されたのか。誰に殺されたのか。純一はそれを知るため、死後の生を送る。 死後の生なんてすごくドロドロとしていそうなのに、淡々と語られるお話。 でも、淡々としているからこそ、さらりと流れていく場面場面が印象的で深いです。 純一が過去にフラッシュバックして、自分の生まれる瞬間を見る場面があるんですけど、どんな気持ちなんでしょうね。これからその子におこることを全て知っている自分が、自分の誕生を見る、というのは。うれしいとかいうより、多分切ないんじゃないかな、と思うのですが。 もし純一みたいに、死んでから自分の過去を見れるとしても、私は見たくないですけどね。
ぼくは死んでしまった今、初めて思うぞんぶんに生きている。(略) もっともっと生きたい。正確には、もっと死んでいたい。 死のなかの「生」の醍醐味を見極めたい。(略) 死後の生がいつまでも続くことを、純一はひそかに望んでいた。
石田衣良:エンジェル,p.245-246,集英社.
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