A Will
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子供が泣くのは知ってるからだよ。
唇を尖らせて、あの人は言った。 何を?とわたしは聞いたような気がする。
何を知ってるの?
庇護者が自分のそばにいること。
泣くのをバカバカしいと思ってた。 泣いたって変わらない現実と、 泣くことでしか表現できなかった自分自身と、
どうしようもなくバカバカしくて、だから泣きたくなんてなかった。
家族の死を神様に願いながら眠りについたことのあるわたしを、 現実に殺すために包丁を握ったことのあるわたしを、
あの人は、軽蔑に値すると、笑って言った。
『俺が欲しいって思ってるものを、壊したいって思うお前ってすげー』
分かり合えることはない、と言われる。 分かり合えちゃダメだ、とも。
愛せない、とわたしは泣いたんだと思う。 どうしても愛せないと思って、どうしてもいなくなってほしくて、
それがどうしても悲しかった。
どうしようもなかった。
愛せないことは、悪いことじゃないよ。
紛れもない優しさが声になって響いて、 ただ、安心をした。
分かり合えることはなくても。 同じ気持ちの子供がここにもう一人いた。
嬉しかった。
愛せなくても大切にはできるでしょ。
あの人の弟が、同じようなこと言って笑ったの。 まったく兄弟ね。似てるのね。
掬い上げられる感覚。
最近はまた泣いてない。けれど。 もう殺したいなんて思ってない。
痛みも、何もかも。
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