A Will
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2005年04月10日(日) |
『starting over』 |
わたしの住んでる町には川が流れてる。 氾濫対策で水を遊ばせる広い土地のついたそこそこの大きさの川だ。
わたしはそこで良く彼とおしゃべりをした。 というか、そこ以外で喋ったことなんてなかった、のほうがずっと正しい。
はじめて彼と喋ったとき、わたしは妙に安心した。 (なぜか知らないけれど会話が成立したことにホッとしたのだ) その日のうちに、また次の日会う約束をした。
時間は同じ6時30分。 場所もここ。
昨日、洪水になる夢を見た。
わたしがそう言ったら、彼は真面目に頷いた。 大丈夫だよ、君の家の方が土地が高いから被害はきっと少ない。
その言葉を待っていたような気がした。 勿論、それはわたしの全くの気のせいだ。
部屋の窓から足を投げ出して牛乳を飲んでたら、 小学校の頃、この牛乳が厄介者だったことを思い出した。
いつも量が多いなぁ、としかめっ面になりながら飲み干してたのだ。 あの細い細いストローから白濁色の液体を吸い上げる瞬間。 (でも、それを嫌いだと思わなかったおかげでわたしは牛乳が今でもちゃんと好きだ)
コップの牛乳を全部口の中に流し込む。
ほんとうに、わたしたちは良く喋った。 昨日も今日も関係ないことで、えんえんと喋り続けた。
終わらせなくて済むように、また始めなくてすむように。
欲しい欲しい欲しい。
全部を満たせるくらい、たくさん欲しい。 寂しいも悲しいも嬉しいも楽しいも忘れるくらい、欲しい。
しかるのち全てが、なくなったとしても。
「あ」
川辺でわたしが石を積み重ねて遊んでたら、彼がふと声を出した。
「なぁに?」
「流されてるよ」
ほら、と指さされた方を見る。
「あ」
「でしょ。あれ、君のだよね?」
「うん・・。あーぁ、お気に入りだったのに」
「サンダル?」
「うん、サンダル」
くるくる回りながら流されてくそれを2人で見送った。
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