A Will
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彼はカッコいい。 モテるだろうなーと思ってたら、モテた。
女の子がキャーキャー言うのを私は彼の近くで眺めてた。
最近、彼に似た芸能人がテレビによく出てる。 その芸能人がテレビに映ると彼がそこにいるみたいで、 シリアスならシリアスなほど笑えた。
美人な女優さんを抱きしめてたりすると、それは傑作のギャグだった。
送信:「今さぁ、テレビに出てるよー。すごいセリフ言ってる」
受信:「違うから!俺じゃないから。でもムカつくから見るな」
送信:「わーー。ちゅうした!ちゅう!」
受信:「しね」
送信:「ばーか」
彼は平気で私に死ねとか言う。 私も平気で彼にバカとか言う。
そのとき私は彼が電話してきたことに全く気づかなかった。 「野ばら」を歌いながらのん気に煙草を吸ってた。
メンソールの涼しい味。
ようやく気づいた着信とインターホンが鳴ったのはほとんど同時で、 私は煙草を空き缶に入れてずれた眼鏡を直しながらドアを開けた。
「どちらさま・・?」
「こちらさま」
「・・・・・松田君?」
「お前、眼鏡の度あってんの?」
知らない男が立ってた。 それは間違いなかった。それは私の知ってる彼じゃなった。それだけのこと。
「好きだ」
一言で、気を失いそうになるなんて、思ってもみなかった。
用心して言われないようにしていた言葉と、 友達を失った喪失感と
口に残った、メンソールの涼しすぎる味。
「ごめん。好きな人いる」
「知ってる」
禁煙しなきゃ、と心の底から思った日の夜。
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