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2018年03月28日(水) ■ |
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Vol.865 母の死ぬ死ぬ詐欺 |
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おはようございます。りょうちんです。
15年も前の心臓の大手術を受けた時から、医師にあなたの命は残り数年だなんて言われ続けていれば、本当に人生の終わりが目の前に迫ってきていても、もうとっくに覚悟ができているのかもしれない。だからだろうか。リスクが大きい割に効果の見込みが少ない放射線治療や抗がん剤の投与を選ばずに、さも当然のようにすんなりと緩和ケアの道を選択した母が、以前よりもむしろ清々しく過ごしているように見えるのは。 俺も父も家族の誰もが、ずっと前から「母の死ぬ死ぬ詐欺」には騙され続けてきた。次に大きな症状が出たら命の保証はないと、いつも恐れながら今日まで母を見守ってきたのだ。家をバリアフリーに改築したのも、北海道や沖縄に旅行に行ったのも、実を言うとすべて母のため。童話の「オオカミ少年」じゃないが、本当にもうじき母の命が尽きてしまうという現実を突きつけられて、動揺しているのは村人ではなく俺ら家族の方なのだ。 ただ、決して病と闘うことを母は諦めてしまったわけではない。治せるものなら治したいと心から願っているはずだし、TVから入ってくるガンに関する情報には相当敏感になっているのも知っている。もちろんいくつかの選択肢の中から緩和ケアを選んだ母の意思は尊重するが、ガンを治せる新たな希望の糸口がもしも別にあるなら、改めて母に選考してもらいたいと思う。それでも、母は緩和ケアを選んだ直後から、それまで口癖のように楽しみだと言っていた東京オリンピックの話題は口にしなくなった。 幸い、今の母に自覚症状は全然ない。痛みや苦痛をどこにも感じることなく、以前と同じ生活ができている。上手くいけば、あと半年近くはこのままの状態でいることができるらしい。でも、ガンは少しずつだが確実に今も母の体を蝕み続けている。母に残された時間は、今年いっぱいかせいぜいあと1年しかない。「母の死ぬ死ぬ詐欺」ならば、このまま永遠に騙され続けていたい。どんなわがままでも無理難題でもかまわない。母の希望をもっと叶え続けてあげていれば、俺ら家族の祈りも叶うのだろうか。
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