着物あとさき 青木玉・著/ 新潮社・刊/ 1700円/ ISBN4-10-405203-5
成人式は借り着だったけど、横文字で言えばサファイアブルーの地に、梅だか桃だか桜だかが吹雪く美しい振袖だったと記憶しているが、多少和服の分かる当時の友人に七五三のなんのと揶揄された。 なんとなくそれが頭に残っていて、社会人になってから着付けを習い、後には小さな呉服販売の会社に勤めもした。月イチの展示会に和服で何度か出るうちに、ベテランのマネキンさんに「最初の頃はみっともない着かたしてたけど、ずいぶん上手になった」と言われて嬉しかったのを憶えている。 それで少し増え、更に多少は持っていてたまに着ていた母のものも譲り受けたけど、今は全く着ない。好きなんだけど……着たいなぁ……
私の出た小学校は西新宿に近いところで神田川を背にしており、川沿いのわりと近くに反物を屋内から半分露天になっている細長い水槽?に晒したり?干したりしている工房が当時屋上から見えた。 一度見学に行ってみたいと思っていたけど、今もあるのだろうか…… あの光景を思い出すたびに何故あんなところに、と疑問だったけど、91ページの中ほどでナゾが解けた。
下落合まで遡るとそこで支流の妙正寺川が流れ込んでくる。このあたりは震災後に開けて、和服の染色加工をする人たちが集まって、互いに連繋し技術を高めて、戦後東京の和服を支えてきたところである。川を挟んで誰だれさんの染色工場、洗い張り屋さんの仕事場などが、行く先々に見られたであろう川筋である。
あそこはきっとその職人さんのコロニーの端の方だったのだろう。この本に出てくる工房があそこだったら、なんとなく嬉しい。いや、死蔵してしまっている着物、お手入れしていただきに持って行っちゃいますって(笑)
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