1年前の今日。夜明け前の一番暗い時間に、父は自ら命を絶った。
残された日記には、長いこと思い悩み、几帳面に身辺を整理してついに決行するまでが記されていた。「最悪のタイミング」、または「悪い偶然」が自殺(自死)を起こさせるのだと、それまでは漠然と思っていたけれど、周囲にさとらせず、きっぱりと死ぬことを選んだ父の亡骸を前にして、厳然とした決意のもとに人生を終わらせる者もあるのだと、初めて悟った。
深く襟を掻きあわせた寝間着の、襟元からのぞいていた傷跡。生命活動を停止した肉体に刻まれた、癒えることのない一筋の傷は、縊死したことを明確に示していた。無論、弔問客には知らされず、その傷は見えないように布団の襟に隠されることとなった。
あれから1年。
正面から向き合うことを避けて、心の奥底に閉じ込めて、乗り越えたつもりでいたけれど、ただ目をそむけて風化するのを待っていただけなのだと、今更ながら気がついた。辛くても、どんなことがあっても、受けとめて、今度こそ胸の奥に父の生と死とを受けとめて、乗り越えていかなければ前に進めない。忘れたりはしない、刻み付けたい、そしていつか夢でいいから、父の笑顔をもう一度見たい。
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