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2003年02月19日(水)
実習の小事件。

今ね、あたしは外来に学生を連れて行き実習している。
 
学生は2日間、外来の患者さんについて回り、患者さんの受診行動を体験するというのが目的。
 
総合病院だから、待ち時間も長く、診察まで2時間という場合もある。
 
そんな中で、学生は患者さんの不安や、苛立ちや、いろんな感情を少しだけ知る。
 
中には、学生が一緒にいたことで、気が紛れたとか、話を聞いてもらえてよかったと言ってくれる患者さんもいる。
 
ありがたいことです。
 
教員にとって、学生を誉めていただけるのは、本当に嬉しいこと。
あたしも学生も、患者さんのやさしさにとても助けられます。



今日、ちょっとした事件がありました。

ある患者さんが、診察が終わり、N子と共にお会計にやってきたので、
「ぁ、終わったんだ」と思い、最後のご挨拶をしようと、会計の近くで待っていたあたし。
すると、N子が、悲壮な顔であたしの元へ走ってきて
「先生・・・これ・・・どうしよう・・・。」
と、涙を潤ませている。

見ると、手の中に小さく折りたたまれた千円札。

実習病院も、大学も、患者さんからのお礼は、お金、物に関わらず、一切お断りしてるし、学生にもそのことは伝えてある。
 
どうしても断れなかったんだな、とすぐに分かったけど、
一応「どうしたの?」と聞いてみた。
「何度もお断りしたんです。でも、ポケットに入れられて、“二人の秘密にしておけば大丈夫だから”って患者さんに言われて・・・。何度も返そうと思ったんですけど、できなくて…。」
と言いながら、N子の目からは涙がこぼれそうになっている。
 
「秘密、って言われたんなら、もう一度自分で返してみる?ダメならあたしが返してあげるから。」とあたしが言うと、「はい・・・」と、お会計を済ませた患者さんのもとへもどる。
 
ちょっと離れて見ていたけど、やっぱり返せなかった。
あたしは学生から千円札を受け取り、患者さんに丁重にお返しした。

学生が握っていた千円札はしっとり湿っていて、学生のポケットの中の葛藤が伝わってくるような気がしました。
 
再度説明をし、千円札は受け取ってくれたけど、
患者さん「俺は、余計なことしちまったのかなぁ・・・・?」と。
 
決まりとはいえ、患者さんが表現してくれた気持ちを否定する形になってしまうような気がして、心苦しかったです。
 
看護師時代にもこういう経験したことあるけど難しいですよね。
患者さんの気持ちはとてもありがたいのに。
 
学生も、ほんとにつらかったらしく、学生同士の話し合いの時にもそのことで泣いてしまいました。
「お昼を一緒に食べようとか、これでご飯買って食べなさいとか、気持ちは嬉しいかったんですけど、それはできないし・・・。断わっても分かってもらえなくって・・・。つらくなってしまったんですぅ。」と。

初めての実習で戸惑いも多かったんでしょうね。

泣いてしまうくらい心が揺れていたのかと思うと、なんかかわいく思えたり。

忘れて欲しくない気持ちですね。


あたしなんかすっかり擦れてしまったから(笑)




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