私、渡辺博子は、速記者です。速記の原稿を入力するのにワープロを買ったことからコンピュータの世界に足を踏み入れました。 今でも、月に何本か、テープで持ち込まれたものを文字データにしてフロッピーで納品という仕事が入ります。 このテープがくせもの。外部のマイクから録音したものであれば、例えば1時間の録音なら、集中して仕事をすれば、3時間ぐらいで完成します。 ところが、マイクロカセット、内蔵マイク録音、しかも大人数の会議のテープを持ち込まれることも多々あります。こうなると泣きそうになります。 お客様は「聞こえるところだけ起こしてくれればいいよ」と言ってはくださいますが、ノイズの海から音を拾い集めるような作業になるわけです。音から単語を考え、単語の前後を判断して文章につぎはぎしていきます。 これが、会議に出席していた人なら、テープで聞いてもわかるのですが、テープだけで聞くと、まるで何を言っているのかわからないものなのです。 速記者は特別耳が良いわけではないのです。出張して書いても料金は同じなので(テープでいただくより、その方がずっと作業効率がよいからです)、会議に同席させてください、とお願いしたいわけです。
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