この前、 ある人とリンゴ狩りにいったんだ。 すごく高いところにある農園で、 眼下にきれいな町並みが、 目の前には夕日に輝く南アルプスが 現実じゃないみたいに映ってた。 私が「ほら」と指さして、ふたり肩を並べ、 贅沢な秋の空間をたのしんだ。
だけど、わかる。 ふたりで景色をみているのに、 きっとそれを共有しあえてなんかいない。 その人のこころの中に映った絵は その人だけのものだった。
うまくいかないって、 こういうことだ、って解った。
帰り道、 二人きりの車の中で、 助手席に座った私がリンゴに変わっていたら この人はいつ気づくだろう。 ちょっと笑って、 ずっと消せなかった。
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