halu
ものが食べられなくなった。
水も飲めなくなった。
あまりに突然で、私は苛立っていた。
予兆はあった。
夏ごろから、私は週に3、4回嘔吐を繰り返していた。
躰の不調はなく、
ただ吐きたいから、吐いていた。
そのとき付き合っていた年上の恋人とも、
上手くいかないことが多かった。
彼は私のことを真剣に愛してくれた。
けれど私はそれをそのまま受け入れることは出来なくて、
愛される自分を否定し続けていた。
私は乖離を起こすようになっていたし、
リストカットの回数も増えていく一方だった。
2004年10月12日。
曇り空は重く、雨が降っていた。
禁煙の談話室でたばこを吸っている上級生に、
私は苛立ちからけんかをふっかけた。
その場に居た講師のおかげで事なきを得たけれど、
私はひどい興奮状態で、
人前なのに涙が止まらなかった。
帰り道、
そのとき入っていたサークルの上級生ふたりと歩いているとき、
私は横道にひとり入り、
手首を切った。
そして、そのうちのひとりに、「たすけて」と、メールを送った。
血は道路を汚し、
服を汚した。
どうやって帰ったのか覚えていない。
つれて帰ってもらったような気がする。
自力で帰ったような気がする。
雨が降っていた。
寒かった。
翌日から、起き上がることすら、出来なくなって、
学校に行けなくなった。
固形物はほぼ何も食べられなくなり、
食べてもすべて吐いた。
液体も口に含む程度しか飲めなくなった。
少しでも量が多ければ、
それすらもすべて、吐いた。
体重は1週間足らずで7キロ強落ちた。
私の手首には常に、
たくさんの生傷があった。
ごみばこのなかはいつでも、
赤いティッシュで埋まっていた。