朝日記(合戦中)
毒舌、ネタバレ注意。義経教注意。

2007年04月10日(火) 静。

桜は護り。
桜が開く瞬間に神が宿る。
神の力が宿るから、花開く。
先と坂と咲く(咲き)はみな霊力が宿る場所。

義経にも静にも、本当に桜が似合うと思う。



静って、名前がすごいよね。
鎮める力。
どんな炎もどんな熱も
どんなに激しく猛ったものも、すべて等しく鎮めてしまう名。
鎮静を、静寂をもたらす名。
そうか。
静って、名前がアルテミスなんだ。


美しさは武器だと思っています。
それは異性の気を惹くような、俗的で下賎な意味じゃなく。

魔や妖が人を惑わすとき、たいてい美しい女性に化ける。
それは美しさに、霊的な力が宿ると信じているから。
目には見えない力。
長く美しい髪や、長く使われた物、長く生きた獣。
長い時間を経たものに力が宿るように。
美しさにも力が宿る。
力の貯まり方は違うけれど。
長さと時間は、蓄積する。
美しさは刹那的に。


静はね、本当にすごい力を持っていたんだと思う。
外見の美しさはもちろん
内面の美しさ。
汚れなく一途で、激しく潔い想い。
どこまでも、高見を目指す誇り高さ。

そりゃあ、力も宿るでしょう。
静の舞は人を惹き付けて止まず、
空間すら支配する。

だからね、思ったんですよ。
頼朝の幕府(天下)が長く続くはずがないって。
頼朝の子供(頼家、実朝)や孫(公暁)があんな結末になったのは
静と義経の子を殺したからじゃないか、なんて。

義経は存在が光でカリスマで。
一ノ谷、屋島、壇ノ浦と奇跡の勝利をもたらした人。

静は日本一の白拍子と謳われ
日照りに苦しむ大地に雨を降らせ、天の恵みをもたらした人。

頼朝は、そんな二人の子を殺したんです。
由比の浜に投げ捨てたんです。
………なんて怖ろしいことを。
今までそんな風に霊的に考えたことがなかったんですが
すごく納得でした。

だってね。
静ですよ。
あの気性のあの静!
愛する義経との子を殺された静が
あれだけの力を持つ静が、おとなしくしているはずがない。
静(白拍子)はシャーマンですよ。
巫女です。
その中で、日本一の力を持っていた静。
99人に出来なかったことを、静だけが成し得た。
天に雨雲を呼び、雨を降らせた。
彼女の憤りが、天に届かないはずがない。
あの気性ですから。
願わないはずがない、頼朝の築く国の終わりを。
子を殺された母が、その相手を憎まないはずがないのです。
そして、静の願いが叶わないはずがない。
静ですから。
天から雨を降らせる技芸と、美しさと
心根の美しさを兼ね添えた彼女ですから。

静の想いが、無念が
義経を想う無償の愛が
頼朝の幕府を、頼朝の血を引く源氏将軍を
絶やしたにちがいない。
そんな風に思えてならないこの頃です。


義経と静の子。
殺されてしまったあの子が、もしも生きて育ったなら
どれほどの力で人を惹きつけるのかと思うと
怖ろしくなります。
平家を滅ぼした父と、天から雨を降らせた母のたった1人の子。
その美貌が、空気を震わせる。
その声色に、草木も聴き惚れる。
愛くるしく、それでいて研ぎ澄まされた存在。
激しく、優しく、甘く、潔く。
太陽の情熱と、月の冷酷を兼ね添えた、光の子。
………すごすぎる。
お…お仕えしたい……………。
究極のカリスマ。
私にとってそれはもう、奇跡を形にした存在です。


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