2005年05月09日(月) |
海外研修して帰国直後に、他の企業に転職 |
日経(H17.5.9)18面で、社員が海外研修して帰国した直後に、他の企業に転職した場合、留学費用を返還する必要があるかどうかについて書いていた。
会社の費用で海外研修に行き、MBAなどの資格を得たのに、その帰国直後に転職されたのでは会社はたまらないだろう。
そのため、会社が、辞めた社員に対し、留学費用の返還を求める裁判がときどき起こされている。
新聞記事にも書いていたが、この問題のポイントは次の2点である。
(1)海外研修が業務かどうか。
海外研修が業務であれば、会社が費用負担するのは当然だからである。
(2)返還を求める金員が、社員への貸付金の返還請求なのか、約束を破ったことによる損害賠償請求なのか。 労働基準法は「労働契約の不履行について損害賠償請求を予定する契約をしてはならない」と定めているため、返還を求める理由が、約束を破ったことによる損害賠償請求であれば、会社の請求は認められないからである。
ただ、会社は、留学費用は社員に対する貸付金であり、5年以内に退職した場合には留学費用は返還するという誓約書をとっていることが多い。
したがって、そのような誓約書の有無が実質的争点となることはなく、争点は、海外研修の実体が、業務かどうかである。
新聞記事では、「用意周到な誓約書を根拠に、企業側が勝訴していることが多いようだ」と結んでいたが、それはいいすぎであろう。
「用意周到な誓約書」があっても、海外研修の実体が業務であれば、会社の返還請求が認められない可能性が高いからである。
したがって、会社側としては、留学前に、「留学後に自己都合で退職した場合は留学費用を返還する」という誓約書を書かせたとしても、安心はできないということである。
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