そんなわけでいきなり新撰組に入隊した私です。
「田造与作?変な名だな…」
目の前に座っているのは副部長の土方歳三です。
「…“副長”だ。で、剣の流派は?」
国民保険です。
「何流かって聞いてんだよ。俺は天然理心流だが」
じゃあ私もそれ。
「そうじゃないだろ」
人は私のことを“天然ボケ”と言います。
「天然戊慶流…聞いたことないな。で、何藩だ?」
マツタケごはんが好みです。
「てめえ、バカにしてんのか」
すみません。納豆ごはんで十分です。
「もういい。水戸藩って書いとく。 ところでお前、局中法度は知ってるか」
春はあけぼの。
「違う。」
和をもって尊しとなし。
「まったく違う。というか耳の痛いことを言うな。これを見ろ」
一、局を脱するを許さず 一、私事の闘争許さず 一、金策すべからず 一、士道に背くべからず ――違反したら切腹
えーと。 つまり『やめるな逃げるなケンカすな』ってことですね?
「厳しいと思うならやめろ」
うちの職場のモットーは、 『やめるな休むな笑うな泣くな逃がすな燃やすな殺すな死ぬな』ですから。
「…厳しいな」
サラリーマンとはそういうものです。
「それでは田中君。明日から一番隊の巡察に同行して貰う」
田造です… そして、完璧に逃げるタイミングを逸してしまった私…
〈続〉
|