山ちゃんの仕方がねえさ闘病記
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2012年11月22日(木) 日中青年友好交流’84

 私が「日中青年友好交流」事業で訪中したのは1984年だから28年も前のことになる。今年28歳になった次女が生まれた年だ。当時の中国共産党胡耀邦総書記の呼びかけによって、日本青年3,000人が中国に招かれた。日本中の各青年組織や自治体などから代表団が組織された。私は友愛青年連盟の団の一員として参加する機会を得た。鳩山威一郎氏を団長に、私は秘書長という肩書きで30名の団であった。

 結構なもてなしであった。人民大会堂での宴会があったし、中国政府の要人も出席していた。受け入れる中国側青年の代表が胡錦涛氏であった。

 とにかく「熱烈歓迎」であった。当時の中国青年は日本に憧れを持っていた。

 どうして今はこうなってしまったんだろうか。

 2012年のノーベル文学賞はとうとう中国人にもたらされた。確実視されていた日本人作家村上春樹氏を抑えての受賞だ。ロンドンなどではどちらが受賞するかで賭けが盛り上がっていたという。

 今回この莫言氏の受賞にはさまざまな異論もあるようだ。例えば西側にいる反体制派中国人作家たちによると、莫言氏は体制側の人間であり批判の目を持っていないので受賞資格はないとか、前回中国人人権活動家にノーベル平和賞を授与したら反発した中国当局によってノルウェーは経済的に莫大な損失を被ったので、今回は中国に阿て莫言氏に授与したとか。世の中の人々の口に戸は建てられないから言い放題である。中国は中国で前回はあれほどノーベル委員会を非難していたのに、今回は手のひらを返したように受賞は当然だと言っている。日本人作家に勝ったと大騒ぎだ。全く大人気ない。
 これは果たしてどうなのか。純文学なのだから読んでみるしかない。読んだ上でそれぞれ批評なり批判なりすればよい。

 莫言氏の作品は「幻惑的リアリズムによって、民話、歴史、現代を融合させた」と文庫版のオビには書いてある。この作風は1984年中国語に翻訳されたガブリエル・ガルシア=マルケスの「百年の孤独」が大きく影響を与えているそうだ。確かに「赤い高粱」はグロテスクで原色的な表現が随所に出てくる。原作には難しい漢字やありもしない漢字がするそうだ。そういうのも含めて「マジック・リアリズム」と呼ぶという。

 作品は一見抗日戦争がテーマになっているようにも思えるが、実はその当時の中国の田舎の社会をリアルに描こうとしたのではないか。戦闘のために命を落とす村人も出てしまうが、そこに暮らす人々の生活を描こうとしたのではないだろうか。
 「赤い高粱」はこの文庫に収録されている2篇に続く4篇の併せて一冊の本にまとめられているそうだ。あとの4篇は文庫化されていない。面白いだけにそのままになっているのは残念である。ぜひ続編を文庫化してもらいたいものだ。

 今回これを読んでみて、村上氏の作品同様に大変面白い作品だと思った。ノーベル賞にノミネートされるのも当然なのだろう。ただ、売れたかどうかについては村上氏にかなわないのかもしれない。何しろ私も今回初めて「莫言」という名前を知った。暗に「言う莫れ」という意味を含んでいるんだとか。だから「体制内批判者」だとする見方もあるらしい。
 今後は政府に干渉されたり利用されたりしないように創作活動をしていけるよう願うばかりだ。まあ、今の体制だと無理だろうけど。「言う莫れ」ということか…


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