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2012年06月01日(金) ■ |
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「人間の大半って絶対に褒められて伸びるタイプだと思いますよ」 |
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『CIRCUS』2012年6月号の特集「なぜか好かれる人の仕事術」の志村けんさんと岡村隆史さんの対談の一部です。
【岡村隆史:やっぱりスタッフって大事ですよね。でも、スタッフにそうやってついて来てもらうのって難しいと思うんですよ。
志村けん:基本的に、どうやったらいいかっていうのは自分でやって見せるしかないよね。それを見て「ああ、じゃあ俺もやらなきゃ」って思ってくれるのが一番いいことだよ。自分でやらないで、頭ごなしに「あれしろ、これしろ」って言ったって聞く気になれないもん。「頑張れよ」って言ったって、何を頑張るんだってことでしょ。だから、まず自分が頑張らないといけない。セットでも衣装でもなんでも「これがやりたいから、こう言ってるんだよ」っていうことを見せなきゃいけないじゃん。言うんだったら、ちゃんとしたものを見せないと人はついて来ないよ。それで、優秀な人のところには、優秀な人が集まってくるんだよ。反対にダメな奴のところには、どんどんダメな奴が集まってきちゃう。
岡村:志村さんは、スタッフを叱ったりします?
志村:うん。でも、いい大人はね、叱るときは陰で叱るんだよ。人前で「なんだこれ!」とか言わない。俺は、なんか言うときは、なるべく陰に行って言うね。
岡村:みんながいる前で、「何やってんだ、バカ野郎!」って言ったって萎縮するだけですもんね。ほんまにちゃんとした人って、終わってからこっそりと「ちょっと」って呼んで、「あそこ、こうこうこうで、これはあかんよ」って言うんですよね。恫喝しても、現場の空気が悪くなるだけですから。
岡村:やっぱりね、ときには叱るのも必要だと思うんですけど、僕は褒めるほうが大事だと思うんですよ。普通に褒められたらうれしいですもん。「あれ見ましたけど、すごく面白かったですよ」って言われたら、うれしいですもん。
志村:褒められんのに弱いな、俺たち。大好きだもんなあ。
岡村:でもこの年になると、周りもなかなか褒めてくれないですよ。上の人はもっと気づいたほうがいいんじゃないですか? 怒るだけじゃなくて、「あれよかったね」って言うことを。特にお笑いの人なんて、褒められて伸びるタイプばっかりだから。
志村:「あれ笑ったねえ!」って言われたときも、「そうか?」って素っ気なく言いながら、腹の中ではうれしくて笑ってるからね。
岡村:「面白かったよ、ありがとう!」って。それ目指してやってるわけですから。でも結局、今日も100点は出されへんかったかも分かんないけど、全力出したぞっていうときも、スタッフは「お疲れっしたー!」で終わっちゃうじゃないですか。もっと「あそこよかったですね」とか言ってくれてもいいんちゃう?って思ったりするんですけど。
志村:俺、仕事が終わったら必ず飲みに行くんだけど、みんな普通に話してるだけっていうのが多いね。「おまえ、番組のこと、なんか言わないの? 少しは触れろよ! あのタイミングよかったですねとかって」って言ったら「いや、今さら志村さんにそんな。面白くて当たり前ですから」って。「それは違うんだよ!」って言ったの。違うよ。
岡村:飢えてますよね。褒められることに。
志村:うん。
岡村:「もっとできるやろ」って言われてやる気になる人もいるかも分からないですけど、人間の大半って絶対に褒められて伸びるタイプだと思いますよ。大人になってあんまり叱られても「なんやねん!」って思うだけやと思うんですよ。子供のときって、大きな声出しただけでも褒められたりするやないですか。
志村:「おまえは声が大きいなあ!」ってね。
岡村:「大きい声で挨拶できたね」とか。それが大人になったら、あら探しばっかりで、「お前、何してんだ」って言われるわけです。これじゃあ、成長しないですよ。褒められるのが一番のやる気の元ですよ。
志村:俺なんて、自分が褒められるとうれしいのが分かってるから、相手も絶対に褒めるもんね。共演者にも「今日あそこ面白かったな、いいタイミングだったよ」とか言うよ。
岡村:同業者だと、分かったりしますからね。、一緒にやってて。うわ、今日すごくうまいこと回ったとか、いろいろかみ合ったなとか。「お疲れっしたー!」だけの人には、逆にこっちが言うたりしますもん、「今日、大丈夫でした?」とか。そうすると「ぜーんぜん、大丈夫です!」。そうじゃなくて! でも褒めてはくれないですね。】
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この対談のなかには、岡村さんが長期休養されていたときの話も出てきます。 岡村さんは、「なんで自分ばっかりこんなに頑張らなくてはならないのか」という気持ちがすごく強かった、と休養前の状態を振り返っておられます。
この「みんな、誉められたほうがやる気も出るし、成長する」というのを読んで、僕も「やっぱりそうだよね!」と嬉しくなりました。 もちろん、厳しく指摘しなければならない場合もあるのですが、志村さんは、「そういうときは、みんなの前ではなく、陰でそっと言うようにしている」そうです。 志村さんといえば、お笑いの世界のなかでは「帝王」であり、誰も逆らえない存在なのではないかと思います。 でも、そんな人だからこそ、かえって気を遣うところもあるのだなあ、と。 「できるヤツが、まず完成したものを示さないと、周りはどうしていいのかわかるはずがない」というのは、「自分がその完成品を作り上げる責任者なのだ」という強烈な自負心のあらわれでもあるのです。 そして、「できる人間の責任」を、志村さんは背負っているのだな、と。 他人には優しくしなければならない、でも、責任者としての自分には、厳しくしなければならない。
ただ「褒める」だけなら、そんなに難しいことではありません。 でも、「褒めるべきところを、的確に褒める」というのはそんなに簡単なことではありません。 「褒める」っていうのは、「叱る」よりラクなことだと思われがちだけれど、相手のことをしっかり見ていないと、褒めるポイントって、なかなか見つからないものなんですよね。 相手だって、有能な人間であればあるほど、ヘンなところを褒められたら、かえって「この人には『見えてない』のだな」という気分になるはずです。 なんといっても、自分が上の立場になればなるほど、部下の「足りないところ」ばかりが目につきやすいものです。
しかし、率直に言うと、志村さんみたいに「仕事のあとは、飲みに行ってコミュニケーション!」というタイプの上司は、部下にとっては、ちょっとつらいところもありますよね。 みんな「ようやく仕事が終わったのだから、飲み会くらいは、それ以外の話をしたい」と考えていても、「仕事人間」の志村さんは、それを受け入れられない。 でも、そのくらいじゃないと、お笑いの世界で、ずっとトップに立ち続けることはできないのでしょうね。
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