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2010年05月04日(火)
「『デスノート』ごっこ」で警察に逮捕されたアメリカの少年

『アメリカから<自由>が消える』(堤未果著・扶桑社新書)より。

【大人たちだけでなく子供たちにも「テロの疑い」が向けられる。
 2004年12月11日、ペンシルバニア州フィラデルフィアにあるホルム小学校では、10歳の女生徒がかばんに入れていた8インチ(約20cm)のハサミを見つけた。校長が警察に通報、すぐに地元の警察が現れ、女児はすみやかに手錠をかけられて連行された。
「娘は新しく買ったCDのパッケージを開けるためにハサミを持っていたんです」
 新聞のインタビューで、生徒の母親は怒りをこめてこう語った。
「それだけで逮捕されたことは、彼女に大きな傷を残しました。
 あれ以来娘はすっかりおとなしくなって、何をするにもびくびくするようになってしまった。前はとても活発で、ものおじせずものを言う子だったのにですよ。
 子供たちに恐怖をうえつけることが安全保障につながるという考え方は、何かが大きく間違っているとしか思えません。
 2007年7月18日、カンザス州出身の8歳の少年は、コロラドの空港のチェックイン・カウンターで搭乗を拒否されている。
 理由を聞くと「テロリストですから、お乗せできません」との回答。詳細を調べてもらうと、少年と同姓同名の男性が、テロ容疑者リストに警戒レベル3で記載されていたという。
 
 世界中で評価の高い日本アニメは、アメリカの子供たちにも大人気だ。
 2008年4月3日、アラバマ州にあるウェストエンド小学校で6年生の男子生徒ふたりが逮捕された原因は、死神のノートに名前を書かれた人が死ぬという内容の、日本のアニメ『デスノート』だった。
 彼らがアニメを真似てノートにほかの生徒や教師の名前を書き、「デスノートごっこ」をしていたのを見た教師が校長に連絡したのだ。学校側から通報を受けて少年たちを逮捕した警察は教師たちを厳しく注意したという。
「『テロとの戦い』の最中ですから、こうした危険な行動は見逃せません。先生だけでなく親御さんにも、子供たちが見ているマンガや友達との会話、遊びの内容などを、しっかり監視していてもらわないと」
 いくつかの州では警察が子供たちに「友達があやしげな行動をとった時に、近くの大人に知らせる方法」をビデオを使って教える時間を設けている。
「デスノートごっこ」をした少年たちには、裁判手続きが取られたのち、学校側から無期停学処分が言い渡された。】

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 この『アメリカから<自由>が消える』という新書には、「まあいろいろ問題点はあるけれど、とりあえず『自由』ではある国」だというアメリカへのイメージが崩れ落ちるほどのインパクトがありました。とくにあの「9・11」以降のアメリカの「監視社会」への変化には凄まじいものがあり、「テロとの戦い」という名目に、ここで堤さんが紹介されているようなことが行われているのです。
 「テロ容疑者と名前が同じ」というだけで、8歳の子供に対してすら「油断」しないというのはあんまりですが、「学校に20cmのハサミを持ってくる」とか「『デスノート』ごっこ」なんていうのは、たしかに「好ましいこと」ではないでしょう。
 それでも、その程度のことで警察に「逮捕」されてしまうなどというのは、日本で生活している僕には、悪い冗談のようにしか思えません。彼らが使っていた「デスノート」が本物だというのならともかく……

 「『デスノート』ごっこ」というのは、あまり「好ましい遊び」ではないでしょうし、そこに同級生や先生の名前を書くというのは、「死ね」と言っているようなものかもしれません。
 とはいえ、先生が厳しく注意するのは仕方ないとしても、「逮捕」とか「無期停学」になるほどの問題というよりは、単なる「子供の悪戯」だと思うのだけど。
 そして、彼らのそんな「ミスや悪戯」そのものよりも、「その程度のことで逮捕されてしまったことによる心の傷」のほうが、はるかに彼らの未来には大きな影響を及ぼすはずです。

 これを読んでいると、こんな「テロとの戦い」を肯定すべきなのだろうか?と考えずにはいられませんし、そもそもこういうのが「テロとの戦い」なのか疑問になります。
 もしかしたら、アメリカという国には、国民を支配するための、本物の『デスノート』があって、そのノートの表紙には「テロ容疑者リスト」と書いてあるのかもしれません。