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2008年04月29日(火)
小学生時代、学級委員の女の子が『機動戦士ガンダム』から学んだこと

『月刊アスキー』2008年5月号(アスキー)の「第1特集・ガンダムという巨大ビジネス」より。

(「ガンダムを知る2人のインタビュー」という記事での土田晃之さんの話の一部です)

【最初にガンダムを観たのは小学校低学年。子供の頃はやっばり単純に、ロボットアニメとしてかっこよかったんですよ。それが、小学校高学年になると「ああこういう話だったんだ」とわかった部分ができて、さらに中学生、高校生になればまた解釈が変わって。そして大人になってから観ると、さらに「今までのは全然ちがう、こうだったんだ!」と思ったりする。観る年代によってまったく違う話になるんで、それが面白かったです。
 それから単純明快じゃないところがよくて。それまでのアニメは、「いいもん」と「悪もん」の区別がついたけど、ガンダムは登場人物が「戦いたくねえ」とか言ってるし、仲間ともめるし、だいぶ違う。それでも最初の頃はガンダムが「いいもん」だと思っていました。
 でも小学校4年生の頃、放課後に友達のトモキとガンダムの話をしていたら、学級委員のセキネさんという女の子が入ってきて。そのとき「お前女だからガンダム観てないだろ、どっちがいい奴かわかるのかよ」と言ったら、お兄ちゃんがいるから観てる、と。そして「戦争にいいも悪いもない!」と言われましてね。それが、ものすごい名言で。俺もトモキもショックで、「確かに!」と納得するしかなくて。あのときのセキネさんのセリフ、まだ心に残ってますよ。そういう”深さ”があるアニメって、当時は他になかったんです。】

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 土田さんは1972年生まれだそうですから、僕とほぼ同世代です。
 土田さんも僕も、『機動戦士ガンダム』はすごい!という評価が世間で確立される前に、リアルタイムでガンダムに触れた世代ということになりますが、当時の『ガンダム』は、クラスの男子の一部が「これは面白い!」と話題にしているくらいのものでした。
「ちょっと難しいアニメで、なんとなくとっつきにくい」というのが、当時の僕の印象だったのです。
 それまでのサンライズの作品が、『ザンボット3』『ダイターン3』といった、比較的わかりやすい勧善懲悪モノのロボットアニメだった、ということもありましたし(でも、『ザンボット3』の最終回には号泣させられました。あれはある意味「衝撃的」だった……)。

 その後、『ガンダム』は再放送や映画化、そして忘れてはならない「ガンプラ」(プラモデル)で大ブームとなり、現在でも「日本のアニメの金字塔」として高い評価を受け続けています。
 『ガンダム』というのは、シャア・アズナブルをはじめとする「敵役」が非常に魅力的な作品で、当時「ガンダムごっこ」をやるときにも、一番人気は「赤い彗星」役だったんですよね。アムロは主人公にもかかわらず、日頃のネガティブな言動が災いしてか、小学生男子には全然人気がありませんでした。

 『ガンダム』というのは、たしかに「自分の年齢によって評価が変わる作品」なのです。子供時代には「大人の都合で戦わされる」アムロやフラウ・ボウやカイに共感していたけれど、今あらためて観ると、ブライト艦長(今の僕よりずっとずっと若いのですが)とかランバ・ラルとかギレン・ザビの立場もよくわかるし、ジオンの主張にも理があるように感じられます。
 いや真面目な話、ブライト艦長は大変だったと思うよ、本当に。

 それにしても、この学級委員のセキネさんの言葉、小学校4年生のときに聞かされたら、僕も一生忘れられなかったでしょう。
 当時の女の子は、ロボットアニメとかゲームにはほとんど興味がないというのが相場でしたから、『ガンダム』を観ていたことも驚きですし、「とにかく戦争はよくない!」という教育を受けていた時代に、学級委員をやっていたような女の子の口からこんな感想を聞いたら、たしかに「衝撃的」なはず。

 「戦争にいいも悪いもない!」
 『ガンダム』って、僕たちの世代にとっては、最も影響力があった「戦争について考えさせるテキスト」だったのかもしれませんね。