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2007年10月26日(金) ■ |
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「『魔界村』というゲームの中心は、レッドアリーマーなんです」 |
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『CONTINUE Vol.36』(太田出版)の「『ゲームセンターCX』特集」より。
(「スペシャル対談・有野晋哉(よゐこ)×藤原得郎(『魔界村』を創った男)」の一部です)
【有野晋哉:他の敵って決められた動きで出てくるのに、レッドアリーマーだけはグチャグチャじゃないですか。藤原さんは先ほどのステージ(編集部註:9月22日に東京ゲームショウで行われた「レトロゲームアワード」。この取材は「レトロゲームアワード」の終了後に収録された)で1回で倒していましたけど、何かコツってあるんですか?
藤原得郎:あります。
有野:僕はそのコツを教えてほしいんです!!
藤原:レッドアリーマーは、基本的にアーサーが攻撃したら避けるんですよ。空中にいたり、地上にもいたりするでしょ?
有野:高いところにいると、もう撃てないですよね。で、斜めにも来るじゃないですか。
藤原:空中にいたら手強いから、もう降ろすしかないんですね。そのためには「攻撃しない」んです。すると、降りてくる。で、攻撃するとまた上がっちゃうんで、しばらく我慢すると、突っ込んでくるじゃないですか。
有野:あー来ますね、ガッガガッガッって。
藤原:そのときがチャンスです。
有野:えー! そんなもんだったんですか。
(中略)
藤原:『魔界村』というゲームの中心は、レッドアリーマーなんです。主人公や世界観の前に考えられていて、そこから全部が派生しているんです。
有野:え、ボスとかが始まりじゃないんですか? その割にはレッドアリーマー、出番が少ないですね。
藤原:その代わり印象が一番強いですよね。本来は「あれが出たら、もうダメ」っていうくらいの位置付けにしようと思っていたんです。
有野:「こいつに睨まれたら、もうかなわんぞ」っていう。
藤原:だからボスが関門じゃなくて、レッドアリーマーが関門なんですよ。
(中略)
有野:僕も、昔はアリーマーくらいでやめてましたもん。
藤原:でも、当時は一度当たったらアウトっていうゲームが多かったんです。『魔界村』は、1回当たっても、まだ生き残っていますからね。だいたい、焦るとミスをするようにはなってるんですよ。だから、じっくりじっくり耐えて耐えて。
有野:じゃあ課長の噂を聞くと、シメシメなんじゃないですか。
藤原:そうですね。非常にありがたいです(笑)。こっちが思ったとおりに動いてくれて。
有野:作った罠、全部にハマるんですもんね。
藤原:それが作り手側の醍醐味ですから(笑)。それが一番いい。上手い人にはあまり興味がないんですよ。
有野:あ、そうなんですか!
藤原:「うん、上手いね」ってくらいで。どっちかっていうと、下手なプレイをしたときに面白いかどうかってことが大事なんです。
有野:どんなありえないミスをするかっていう。
藤原:それでクソーと思ってくれると。
有野:そうですね、まんまと思ってますね(笑)。
藤原:上手い人と下手な人のプレイって違いがあるんですよ。だから、上手い人を殺そうとするところでは、下手な人のほうがスムーズに行けたりするんです。両方を混ぜつつ作っていますね。】
〜〜〜〜〜〜〜
僕もファミコンの『魔界村』の難しさにはさんざん苦しめられました。当時は、あまりに難しくて先に進めないので、「本当は容量が足りないか製作が間に合わなくて、ステージ3までしか入っていないのではないか?」なんていう噂も流れていましたし。 でも、あの「宿敵」レッドアリーマーが、『魔界村』の真の主役だったというのには驚きました。確かに、あの強さと独特の動き(ああいう滑らかな曲線の動きをするキャラクターは、あのゲームではレッドアリーマーだけでしたし、当時のゲームのなかでも珍しかったのです)は非常にインパクトがありました。 当時は「レッドアリーマーから先に進めない!」という理由で『魔界村』を投げ出してしまった人もけっこういたのではないでしょうか。 「レッドアリーマーって、なんでボスキャラでもないのにこんなに強いんだ? ぜったい、早くゲームオーバーにしてやろうっていう陰謀だ!」とか、友達と言い合っていたような記憶もありますし。 その後のシリーズでの活躍ぶりをみると、製作者側もアリーマーが「お気に入り」だったのだとは思っていましたが、それにしても、『魔界村』の世界観の中心が、アイツだったなんて!
そして、この対談のなかで、もうひとつ僕の印象に残ったところは、藤原さんが、「下手なプレイをしたときに面白いかどうかってことが大事」と仰っておられるところでした。ゲームを作る側にとっては、「クリアできる正規のルート」をキチンと作ることが大事なのだと僕は考えていたのですが、ゲームというのは、「ミスしたときに面白くなくてはダメ」なんですよね。 言われてみれば、どんなゲームでも、一部の超絶ゲーマーを除くプレイヤーは、ノーミスでクリアできることなんてほとんど無いはずです。 「スムーズにクリアできるシーン」よりも「やられてゲームオーバーになるシーン」を、はるかに高頻度に体験しなければならないわけで、「下手なプレイをしても面白いゲーム」じゃないと、確かに長時間遊ぶのは辛いはず。ゲームオーバーになるときって、基本的にプレイヤーはムカムカしているのですが、それでも思わず「もう1回!」とスタートボタンに手が伸びるようなゲームは、やはり「いいゲーム」なのでしょう。 「面白いゲーム」っていうのは、ある意味「今度はどんなやられ方でゲームオーバーになるのかな?」という楽しみがあるゲームなのです。悔しいけど、キャラクターのやられっぷりに笑っちゃうような。 そういう意味では、『スーパーマリオ』などは、本当によく考えられ、作りこまれていますよね。
ゲームを作る人の思い入れや重視しているポイントというのは、プレイヤーが意識している部分とちょっと違うみたいです。 でも、ファミコンの『魔界村』のアリーマーは、さすがにちょっと難しすぎたような気が、今でもするのです。 あれをアーケードでクリアした人って、そのお金でファミコン本体くらい買えたんじゃないかなあ……
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