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2007年02月23日(金)
「ハネムーン」の淫靡な語源

「知っておきたい『食』の世界史」(宮崎正勝著・角川ソフィア文庫)より。

【蜂蜜は、長い間「不死」のシンボルともみなされてきた。現在でもローヤルゼリーは、そのようにイメージされている。メソポタミア文明・クレタ文明などでは、蜂蜜は死後の世界で食べられる貴重な食物とされた。めったに食べられない蜂蜜を身近に置くことは一種のステータスでもあったようである。エジプト文明では、ファラオ(王)と神官のみが、神聖な食べ物として上質の蜂蜜を独占した。ラムセス三世の時代(前12世紀)には、3万1912個の壺、約15トンの蜂蜜が神殿に納められていたという。古代中国でも蜂蜜は評価が高い甘味料だった。『礼記』は、なつめ、粟、飴と並んで、子が蜂蜜を供することを、親孝行として記している。アメリカ大陸でも、最古のマヤ文明を築いたマヤ人の手でハチを飼う技術が確立されている。
 時代はかなり下るが、中世ヨーロッパでも蜂蜜は貴重な食材とされた。ゲルマン人は、結婚後の1ヵ月間、蜂蜜を発酵させた酒を飲んで子づくりに励んだという。それが新婚旅行や新婚休暇を指すハネムーン(蜜月)の語源である。フランク王国のカール大帝(742-814)は財政面から養蜂を奨励し、収穫した蜂蜜の3分の2、密ロウの3分の1を税として物納することを義務づけた。当時、ある程度ゆとりのある家庭では必ずミツバチが飼われていたという。】

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 この本によると、【現在でも、砂糖の原料のサトウキビとテンサイ(ビート)の生産量を合わせると年に15億トンを超え、米を麦を合わせた生産量よりも多い】のだそうです。「主食」である米や麦のほうが生産における優先順位は高そうなものなのですが、人間というのは本当に「甘いもの」が好きみたいです。
 「蜂蜜」といえば、「砂糖」と並ぶ「甘いもの」の代名詞なのですが、現代でも砂糖よりちょっと値段が高くて神秘的なイメージがありますよね。いくら甘いものでも「砂糖とクローバー」では、マンガのタイトルとしては変ですし(まあ、考えてみれば「ハチミツとクローバー」も、両者ともカタカナであること以外には、あまり共通点は無さそうではあるのですけど)。
 蜂蜜というのは、ここで紹介されているように、人類の歴史上長い間「高級甘味料」として珍重されているのです。なかでも僕が驚いたのは、「ハネムーン」の語源でした。
 「蜂蜜のように『あまーい』日々」というような例えとして使われていたのかと思ったら、中世ヨーロッパの人々は、本当に蜂蜜を発酵させた酒を飲んで、蜜浸りになりながら、子孫繁栄に勤しんでいたようです。なんだか、そんなふうに考えると「ハネムーン」っていうのも、ちょっと淫靡な感じではありますね。そこまで新婚早々に「子づくり」を奨励されるというのも、現代人の感覚からすれば、かなりプレッシャーになるのではないかなあ、とも思いますけど。