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2007年01月11日(木)
勇者「ロト」の背徳的な「伝説」

『飛びすぎる教室』(清水義範[著],西原理恵子[絵]・講談社文庫)より。

(清水さんが「旧約聖書」のさまざまなエピソードについて書かれた章の一部です)

【その次に登場するのが、イスラエル民族の父祖とされているアブラハムである。だが、アブラハムの話の前に、彼の甥のロトの話をまとめておこう。それが、ソドムとゴモラの話である。
 ロトと妻と二人の娘は、ヨルダン川に近いソドムの街に住んでいた。ところが、ソドムとゴモラ(ゴモラがどういう街なのかはほとんど語られない。ただ、二つでセットにして語るのだ)の街は、人々が享楽に走り、退廃しきっていたので、神はそこを滅ぼすことにする。ただし、ロトとその家族は正しい人だったので、使いをやって、街から逃げろと伝える。決して街のほうを振り返らずに逃げろと。
 やがてソドムとゴモラにタールと硫黄が降りそそいで街は全滅する。その時、ロトの妻はつい振り返ってしまい、たちまち塩の柱になってしまう。
 その話をロバート・アルドリッチ監督が映画化したのが『ソドムとゴモラ』だ。ロトを演じたのがスチュアート・グレンジャーだった。
 ソドム、と言えばキリスト教徒にとって淫らな街、という意味だ。だから、ソドミーという言葉があって、男色、少年愛、または獣姦の意味である。
 ところが、映画には描かれていなかったが、その後、ロトの二人の娘は、この地には私たちの夫となる人がいないから、お父さんと寝て子を作りましょう、と相談し、父に酒を飲ませて順に子をもうけるのだ。性的に乱れてないから神に助けられた者だというのに。
 とにかく、ロトの娘、と言えば近親相姦者という意味である。】

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 「ロト」と言えば、「ロト6」か、あの『ドラゴンクエスト』の伝説の主の「勇者ロト」が思い出されます。おそらく、『ドラゴンクエスト』の「ロト」は、シナリオを書いた堀井雄二さんがどこかで聞いた名前をつけたものだと思うのですが、堀井さんは、旧約聖書の「ロト伝説」をどこまで知っていたのでしょうか。

 もしかしたら『ソドムとゴモラ』を観ただけで、その後のロト一家については知らなかったのかもしれませんし、『ドラゴンクエスト1』では、「伝説の勇者」として名前だけが出てくるような存在でしたから、あまり深く考えずに語感だけでつけてしまったかもしれません。まあ、これはあくまでも「旧約聖書に書かれているエピソード」ではありますし、当時の倫理観や「誰もいないところに父親と娘が二人」というシチュエーションで、そのまま「滅亡」を選ぶのか、それとも「近親相姦」を選ぶのかというのは、どちらが正しいとかいえるような話ではないのですけど。

 でも、こういうのを読んでしまうと、「『勇者ロトの血を引くもの』っていうことは……」とか、2007年に生きる僕としては、ちょっと考えこんでしまうものではありますね。「歴史(それも「史実というより神話」)は歴史、ゲームの世界はゲームの世界」であって、名前の一致になんて、あんまりこだわらなくてもいいのかもしれませんが、こういうのって、知ってしまうとちょっと気になる話ではありますよね。