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2006年11月17日(金) ■ |
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あなたの名前には、「人名に使うべきではない漢字」が使われている! |
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『歴史の活力』(宮城谷昌光著・文春文庫)より。
【人名でも社名でも、あらたに命名するとなれば、やはりそれなりの注意をはらうべきであろう。 漢字をもちいるのなら、字づらよりも字の正しい原義をふまえて名づけたいものだ。漢字とは外国の文字であったことをついつい忘れがちになる。たとえば三井や三菱などは、三という数字を社名にもっている。 「道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず」(『老子』) といって、三は無限大をあらわす数字なのである。『淮南子』にも、「物は三を以て成る」とあるから、この数字はそうとう吉い。 奇数が陽、偶数が陰なので、事業にのりだす者がえらばねばならぬ数字は当然奇数である。 あるいは、東西南北のどれかを社名にいれる場合は、社主がもっている徳を五行にあてはめてみたり、職種とのかねあいもあろうが、ふつう実りと収穫をあらわす西がよい。中国では周の武王も秦の始皇帝も漢の高祖(劉邦)も、すべて西方にいて天下をとることになった。 人名についていえば、名としてもちいてはならないものが『春秋左氏伝』に列挙されている。それらは、
・国名 ・山川名 ・病名 ・六畜名(牛・馬・羊・鶏・犬・豚) ・器物・玉帛(ぎょくはく)名
である。山でとれる宝石を玉といって、海でとれる珠(しゅ)とは正確にはちがう。帛(はく)とは白のねり絹のことである。それらは病名をのぞいてすべて祭礼に関係があったからである。 日本人は「美」の字をむやみやたらに女の子の名につけたがるが、この字は「羊」と「大」とが組み合わさってできたものである。大きい羊とは、神へのいけにえにふさわしく、たしかに清らかな羊ではあるにはちがいないが、やはり六畜名に入るとおもったほうがよい。注意を喚起しておきたい。】
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ちなみに、「三」がついている「三井」は、「越後屋」を開いた三井高利という開祖の苗字からとられており、「三菱」のほうは、創業当時の幹部3人に「川」がついていたことから、「三川商会」という社名になり、それが、岩崎彌太郎の独裁体制になったときに、社名を船旗の三つの菱形にちなんで「三菱商会」と改称したそうです。「三菱」のほうは故事にちなんで縁起をかついで「三」をつけたのか、「三」がなんとなく座りがいい数字だったからなのか、それとも、単なる偶然だったのかは、調べてみたけどよくわかりませんでした。でも、長嶋茂雄選手の「背番号3」のおかげもあってか、今の日本人にとっても、「三」というのは非常に好まれる数字みたいです。
最近はけっこうオリジナリティがあるというか、奇抜な名前の子どもが多いようなのですが、子どもの名前をつけるとき、字画にこだわりを持っている人は多くても、こういう「漢字の語源」についてまで考えている人というのは、ほとんどいないのではないでしょうか。僕もこのような「人名として用いてはならない漢字」があるというのははじめて知りました。 「悪魔」なんていうのはさすがに「常識としてありえない名前」だと思いますし、ここに挙げられているものの中でも、「病名」なんていうのはさすがに使おうという人はほとんどいないでしょうが、実は、ごく当たり前のように使われている漢字にも、「望ましくないもの」が含まれているようなのです。 あれだけたくさんの人に使われていて、「やっぱり、親心としては『美しく』育ってほしいよね」と誰もが頷くはずの「美」という字も、あらためて「あの字は生贄の羊のことなのだ」と言われると、なんだかちょっと「イヤな感じ」ではありますよね。まあ、「知らなければ気になることもない話」なんでしょうけど。
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