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2006年10月16日(月) ■ |
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幻の「噂の刑事マツとトミー」 |
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「ぐっとくる題名」(ブルボン小林著・中公新書クラレ)より。
(小説、マンガ、映画、音楽などのさまざまな「面白い題名」について考察されているエッセイ集の一部です)
【「噂の刑事トミーとマツ」〜テレビドラマの題名
このドラマに主演した松崎しげる氏が、後年この番組を振り返ってこんなことをいっていた。 「最初、出演の依頼があったときに出した条件は、俺の名前を題名の最初にクレジットしてくれよということだった」 ところがドラマの相棒のニックネームが「トミー」、自分が「マツ」に決まった。「それじゃあ仕方ないと。だって『マツとトミー』じゃね。きまらないもの」と笑って述懐する松崎。 ちょっと待て。「俺の名前を最初にクレジットせよ」は依頼を受ける「条件」だったはずの事柄ではないか! それをも覆して納得させるほどの抜群の安定感が「トミーとマツ」という語の並びにはあったことになる。 「tomi-tomatu」にあるテンポのよさが、「matutotomi-」になるとto音が連続していまい、読みにくさとバタバタ感を生み出してしまうわけである。 韻を踏むという行為は、ちょっとバランスを変えるだけでまったく異なった印象になることに気を付けたい。 そういえば2002年の大河ドラマ「利家とまつ」。これは戦国武将とその妻の名からきた題名であると表向きにはいわれている。だが、明らかに「トミーとマツ」へのオマージュであろう。いや、まじでまじで。】
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「噂の刑事トミーとマツ」なんて、聞いたことないよ、と仰る方も多いのだろうとは思いますが、1972年生まれのブルボンさんとほぼ同世代の僕は小学生時代この刑事ドラマが大好きだったので、この項をニヤニヤしながら読みました。いや、当時の「トミーとマツ」のインパクトと人気ぶりは、本当に凄かったのです。
以下は、Wikipediaの「噂の刑事トミーとマツ」の項より。 【外見も性格も対照的な2人の刑事、岡野富夫(トミー)と松山進(マツ)の名コンビが時には衝突し時には協力しながら事件を解決まで導く。トミーは気の弱い刑事であるが優男で女性にもてる。マツは直情型の刑事で、女好きであるものの不細工で背が低く、シークレットブーツを愛用しており「世界一踵の高い靴の男」と言われている。 各話のクライマックスの格闘・銃撃戦シーンで怖じ気づくトミーにマツがしびれを切らし、トミーを「トミコ!」と怒鳴りつけると、トミーが耳をピクピクと震わせた後急に発奮し、あっと言う間に悪党をなぎ倒すと言う展開が定番となっていた。マツの場合も「マツコ!」と呼ばれると鼻がピクピク動き戦闘能力が上がる。】
クライマックスで、それまで怖じ気づいて何もできないでいた優男「トミー」が、マツの「お前みたいなヤツとオンナの腐ったのって言うんだ、おまえなんてトミコでたくさんだ、トミコ〜!」(って、今こうして思い出すとフェミニストの方々にムチャクチャ怒られそう…)という罵声を聞いたとたんに急に強くなり、悪党たちをなぎ倒すという「水戸黄門のような刑事コメディ」だったのですけど、そのトミーの豹変っぷりがとにかく面白くて気持ちよくって。小学校男子のなかでも「○○子〜!」というのが大流行でした。
それにしても、この松崎さんの「タイトルについての裏話」は僕も初耳でした。というか、「トミーとマツ」というタイトルにあまりに慣れすぎてしまって、「マツとトミー」だったら、なんて考えたこともありませんでした。そして、確かに松崎さんが「名前の順番」にこだわって「マツとトミー」になっていたら、あれほどまでの大ヒットドラマになっていたかどうか。確かに「マツとトミー」って、言いにくいものなあ。 もちろん、「そんな些細なことでは、人気は変わらなかった」可能性もあるのですけど、松崎さんのこのコメントからは、「やっぱりタイトルの語感って大事」だということが伝わってくるのです。たかが「名前の順番が替わるだけ」なのに。
ところで、この2人のコンビ、25年ぶりに映画で復活するらしいです。 日刊スポーツの記事より。
【ドラマ「噂の刑事トミーとマツ」で共演した歌手松崎しげる(56)と俳優国広富之(53)が、映画「ケータイ刑事 THE MOVIE2」(田沢幸治監督、来年3月10日公開)に、25年ぶりにトミーとマツの設定で出演することになり、16日、都内で会見を行った。 ともに「うれしい、楽しい」と笑顔。それでも、松崎は「昔は会えば女の話だったが、今は薬や病院の話」。国広も「夜、飲みに行くための栄養ドリンクが、今は純粋に翌日の仕事のため」と冗談めかした。】
いやまあ、昔のファンとしては非常に楽しみなんですけど、56歳と53歳の「トミーとマツ」を観る日が来るなんて、僕も歳をとってしまったものですね……
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