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2006年08月05日(土) ■ |
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川上弘美さんと「名無しさん」の終わりなき闘い |
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「オトナファミ」2006・SUMMER(エンターブレイン)の記事、映画『時をかける少女』の原作者・筒井康隆インタビューより。
【インタビュアー:ゲームやネットが普及して、『時かけ』が世に出た時と比べて全く違う世の中になっています。先生はパソコン・メールをお使いになられますが。
筒井:メールは本当に必需品だね。そもそも、ワープロでパソコン通信を始めたんだよ。ワープロの”機能”というメニューの一番下に<パソコン通信>ってあった。弁当箱のような巨大なモデムとつなげてね。その後ホームページを作る時に、画面が見られないといけないっていうんでマックを買って、以来マックなんだ。だから今ほとんどの映像がウインドウズ対応だけで、見られなくて困ってる。去年買ったのになあ!ネットも、僕の未公認のファンクラブがあちこちにあるから、それを覗くよ。僕が入ると大騒ぎになるから、そっとね。あと、悪口は読まないこと。相手はこっちが有名人だと無茶苦茶なこと書いてきますよ。ネットの会議室なんかでも、ヘンなやつが入ってきて嫌味を言うんですよ。例えば川上弘美なんかは悪口を言われて、反論してもまたされちゃうから、自分で自分の手を押さえて「やめるんだ! やめるんだ!」って苦難してたみたいです。僕は、自分のファンがいっぱいいる中で負けたら恥だから、ぎゃんぎゃんやり返すし、いざとなったら活字があるから。新聞連載かなんかでそいつの名前出して反論しちゃえばまず勝ちます(笑)。】
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『朝のガスパール』で、日本初の「ネット連動小説」を書かれたりしてパソコンにはかなり造詣の深い筒井さん。いまだにマックしか持っていないというのは、ちょっと意外でした。稼いでおられるのだから、ウインドウズも買えばいいのに、とかちょっと思ってみたり。 このインタビューでは、筒井さんが「自分のファンクラブのサイトを覗いている」ことがわかります。作家だって人間ですから、世間での自分の評価というのは、やっぱり気にならないわけがないみたいです。もちろん、ファンサイトに「直接介入」する人は少数派なのかもしれませんが、検索で上位に挙がるようなサイトに関しては、本人が訪れている可能性というのは、けっこう高いのかもしれませんね。 しかし、いくら有名作家でも、ネット上で自分の悪口が書かれていれば、やっぱり悔しかったり、悲しかったりするみたいです。筒井さんの話のなかにある【例えば川上弘美なんかは悪口を言われて、反論してもまたされちゃうから、自分で自分の手を押さえて「やめるんだ! やめるんだ!」って苦難してたみたいです】なんてエピソードを読むと、そのとき川上さんが身悶えている様子が目に見えるようです。独りでディスプレイの前に座って、自分の手を押さえて「やめるんだ!」と自分に言い聞かせている姿というのは、想像してみるとかなり滑稽なシチュエーションではあるのですけど。
「有名税」だと言うけれど、やっぱり誹謗中傷されれば悔しいのは当たり前です。相手がただの「名無しさん」で、失うものが何もなかったりするだけに、そういう「不毛な闘い」は、自分にメリットがないとわかっていても、反論したくなるのが人情だろうと思います。 「ブログの女王」こと眞鍋かをりさんは、先日、あるテレビ番組のなかで、「悪口みたいな(書き込み)は、見たら負けなんですよ」と発言されていました。眞鍋さんは、当然、「自分も悪口を言われている」ことを知っているわけです。でも、負けないためには、「知らんぷり」するしかない。 筒井さんみたいな「武闘派」はごく少数派で、大部分の有名人は、「やめるんだ!」派なのでしょう。見ず知らずの人に悪口を言われるのって、けっこうキツそうだよなあ、いくら相手が「名無しさん」でもねえ。
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