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2006年07月20日(木)
「私は英語ができなくていい!」

「ぢぞうはみんな知っている」(群ようこ著・新潮文庫)より。

【英語ができないと、できる人よりバカに思われるんじゃないんだろうかとか、いちおう大学を卒業しているんだから、英語くらいはと思ったのも事実である。が、もう見栄を張るのはやめた。
「私は英語ができなくていい!」
 のである。だいたい書く仕事をしていながら、きちんとした日本語を知っているかというと、ものすごくあやふやだ。母国語すらちゃんと読み書きできないのに、他の国の言葉なんか覚えられるわけがない。英語を覚える前に、まず日本語をきちんと学ぶのが順番なのだ。それに英語は日本語と違う、英語的な独自の発想をしないと、日本語をただ訳しただけでは会話にはならないと聞いたこともある。私はどっぷりDNAが日本人なので、他の国の人間のような発想なんてとてもじゃないけどできない。それができる人とできない人と、絶対に向き不向きがあると思う。以前、上海に行ったときに、通訳をしてくれた若い女性が、
「日本語を覚えるために、学校以外に1日6時間以上勉強をしたので、他のことは一切、できなかった」
 というのを聞いて、深く納得した。通訳ともなればプロだし、ちょっと外国語ができる程度ではすまないのは事実だが、異国の言葉を流暢に話せるよういになるには、大変な努力が必要なのである。で、私は英語に関しては努力することを一切やめた。今まで頭の中に入っている英語で済ませる。万一、街角で急に英語が必要になる状況になったら、そばに英語が話せる人がいるかを探す。これだけ世の中の人々が、英語、英語といっているのだから、声をかけたら英語が話せる人の1人や2人、すぐ見つかるだろう(と思う)。海外で英語が必要になったら、ガイドを雇う。でもそういう状況ってほとんどないような気がするのだ。
 語学留学をした経験がある若者で、実際に流暢に英語が話せるようになる人は、実はとても数が少ないらしい。留学をしても日本人同士でつるんでいるので、いつまでたっても上達しないんだそうである。海外に行っただけで英語ができるようになるんだったら、いくらでも行く。外国人相手のおみやげ屋のおばちゃんも、特に英語の勉強なんかしたことがないのに、片言でああだこうだと相手をし、外国人客も喜びおばあちゃんも商売が成り立つという話をテレビで見たことがある。つまり、
「伝えたい!」
 という意思があれば、どんなつたない語学力であったも、たとえジェスチャーだけであっても、伝わるのではないだろうか。】

〜〜〜〜〜〜〜

 僕は「英語が苦手」で、しょっちゅう「もっと英語ができるようになりたいのになあ」なんて悩んでいるのですが、この文章を読んで、なんだか「英語が苦手な最大の理由」がわかったような気がしました。日本語通訳の人が「学校以外に毎日6時間勉強した」と言っているように、「大学受験以来、ろくに勉強もしていない僕が、英語がそんなに得意になれるはずがない」のですよね。センス云々の前に、まずは「勉強不足」だとしか言いようがありません。
 でもまあ、現実問題として、ここで群さんが書かれているような「開きなおりの心境」にも、なかなかなれないのです。
 もちろん、ときどき海外旅行に出かける程度であれば、どちらかというと、語学力よりも度胸のほうが大事であるような気がします。土産物屋で買い物をするのであれば、中途半端な英語を小声でボソボソと呟くよりも、ジェスチャーのほうが有用でしょう。
 ただし、それはあくまでも、「相手がこちらの話を聞く体勢でいてくれる場合」限定なんですよね。実際に海外で生活をしている人に話を聞いてみると、「英語も喋れないような人とは、かかわるのがめんどくさいと考えている英語圏の人」は、けっして少なくないようなのです。もちろんそれは、日本人にもいえることで、外国人に話しかけられても、「アイ・キャント・スピーク・イングリッシュ!」と、その場を立ち去ってしまう人も多いはずです。
 いくらこちらが「伝えたい!」という熱意を持っていたとしても、相手が「聞きたい!」という熱意を持っていなければ、コミュニケーションは成り立ちません。まあ、そんなに不親切な人ばかり、ということもないのでしょうけど。
 ちなみに、「英語が上達するための最良の手段」は、やっぱり「留学すること」なのだそうです。僕に留学時代の話をしてくれた人は、英語もよくわからないのに、いきなりラボ(研究室)での英語のミーティングに参加させられ、しかも、みんな新入りに全く遠慮することはなく、ものすごいスピードで普通に喋っていたのだとか。そういう環境に置かれてしまうと、もう「慣れるしかない」「勉強するしかない」のです。もしかしたら、「語学そのものを勉強するため」の留学よりも、「専門的なことを学ぶためには、英語を使うしかない」留学のほうが、英語が早く上達するのかもしれません。
 正直、論文を自分の国の言葉で読んだり書いたりできるのって、なんだか羨ましくてしょうがないのですけど、逆に、日本語で書いてあってもわからないものはわからない、からなあ……