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2006年02月13日(月) ■ |
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「通帳男」や「皿嘗め女」を愛せますか? |
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「ダ・ヴィンチ」(メディアファクトリー)2006年3月号の連載エッセイ「もしもし、運命の人ですか。」(穂村弘著)より。
【友人のなかに、いつも複数の貯金通帳を持ち歩いていて、初対面の女性にその残高を見せる男がいる。
「これとこれとこれとこれと……、足してごらん、ほら、6000万だよ」
などと云っている姿をみて、こいつ、とんでもないなあ、と思うのだが、現実に彼は非常にもてている。 それは決して金の力というわけではないようだ。異常なキャラクターそのものに、異性をひきつける力があるのだろう。ここまでいくと、もう自慢とか俗物とかの次元を突き抜けて、何か狂ったセクシーさと云うか、特殊なアピール力があるのかもしれない。 その様子をみていると、自慢話をしない、貧乏ゆすりをしない、などとちまちま考えている自分が虚しくなる。しかし、私に彼の真似はできない。二重にも三重にも不可能だ。 最高の自己アピールとは、結局、圧倒的な「個性」の提示に尽きるのかもしれない。 そう云えば、とやはり友人のひとりである画家の女性のことを思い出す。 初めて一緒に食事をしたレストランでのこと。 彼女は食べ終えたお皿を両手で掴んで、きれいにぺろぺろと嘗めたのだ。 びっくりした。 だが、それが一種の信念に基づく行為であることが直感的に理解できて、私は心を動かされた。 おそらくはエコロジカルな理由に因るのだろうか。前菜から最後のデザートまで、彼女はお皿を嘗め続けた。 いつどこで誰と一緒でも、必ずこうするのだ。 そう感じた瞬間に、このひとはもてる、と確信する。 この「皿嘗め」一発で彼女に惚れてしまう男は(そして女も)沢山いるだろう。 しかしながら、通帳を見せる行為と同じく、こちらもかたちだけ真似できるようなものではない。 異性にアピールするなどという目的意識を遥かに超えた「個性」の発現なのだ。】
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この引用した文の前には、【女性は、「押し」によって心が動かされる人と、「第一印象」で目の前の男が恋人になれるかどうかを決めてしまうという2つのタイプに2分されるのだが、その「第一印象派」の女性に最初に好印象を与えるにはどうすればいいのか?】というような内容が書かれています。 僕は正直、ここに挙げられている「いきなり通帳を見せる男性」とか「皿を嘗める女性」を実際に目の当たりにしたら、いくらそれが「エコロジカルな理由」であっても、かなり引きまくること確実ですが…いくらそれをやっているのが伊東美咲でも、百年の恋も醒めそうな気がします。しかし、絵的に考えれば、確かにそれをやる人によっては、ものすごくセクシーだったりするのだろうか。 「通帳開示」「皿嘗め」なんていうのは、考えてみれば、「誰だって、やろうと思えばできる」はずです。金額はさておき、銀行の通帳はみんな持っているだろうし、舌があれば、皿を嘗めることだって、けっして難しくはない。でも、誰か他の人、それも、憎からず思っている異性の前でそれをやるというのは、やっぱりかなりの「勇気」か「信念」が必要でしょう。僕たちは、それが「他人に『下品』だと思われる行為」であるということを知っていますから。 こういう「個性」というのは、「すごく興味を持たれる」可能性がある一方で、「ものすごく嫌われる」というリスクを抱えていて、どちらかといえば、嫌われる可能性のほうが高いと思います。いや、10人中9人くらいは引くのではないでしょうか。その一方で、いくら「人畜無害な男」であることをアピールしても、結局は何の印象も残らないのだから、それならば、一か八かに賭けるほうが、恋人探しには効率的なのかもしれませんね。かの羽賀研二さんも、「レストランで肉料理を皿に直接口をつけて(ナイフやフォークは使わずに)動物のように食べる」なんて言われていましたし、それが、相手に「インパクトを与える」ことだけはまちがいありません。
しかし、本当にこの人たちって、「モテる」のかなあ。やっぱり、僕にはちょっと信じがたいのですけど。 「通帳男」はキムタクそっくりだったり、「皿嘗め女」は深津絵里の生き写しだったりするのでは……
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