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2005年01月18日(火)
「市民サービス」と「不当労働」の低次元の争い

西日本新聞の記事より。

【長崎市が新年から、全職員を対象に、毎朝、始業前の「あいさつ唱和」に取り組んでいる。民間の接客意識を採り入れ、市民サービスの向上を図る作戦だが、労組は「職務命令での参加強要はおかしい」と反発。実施率も低く、市民は首をひねるばかり。果たして効果のほどは…。

 「あいさつ唱和」は百貨店などで行われ、社員らに接客マナーを徹底させるため「いらっしゃいませ」などの言葉を発声させている。官公庁では長崎地方法務局対馬支局が実施。群馬県太田市では「市民の目線で考えます」などの心構えを唱和している。
 長崎市は昨年末、総務部長名で全部署に「おはようございます」「お待たせいたしました」など四つの言葉を唱和するよう通知。周辺六町を編入し、新長崎市となった四日にスタートさせた。
 各部署で毎日午前八時四十五分の始業直前に行い、係長が参加者数を記録する。その結果、企画した人事課や、広報課ではほぼ全員参加。これに対し、窓口業務が多い市民課では、五つの係のうち二係が「普段からあいさつしており、必要ない」などの理由で実施しておらず、財政課も「忙しくて一日しかやらなかった」。保育所や市民病院など本庁外の機関では、出勤時間が異なることもあり、ほとんど行われていない。
 一方、三つの職員組合でつくる市労連は、昨年末から「窓口サービス向上が目的ならば、あいさつが不十分な人を個別に指導すべきだ。時間外の勤務命令は不当」として労使交渉を要求。これに対し、人事課は「労組との協議事項ではない。公務員にも民間並みのサービスが求められる今、意識改革の一環ととらえてほしい」と回答、平行線のままだ。
 市役所を訪れた女性会社員(50)は「あいさつができない人が、唱和で改善されるとは思えないし、組合が騒ぐほどのことでもないと思うんだけど」とあきれ顔だった。】

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 当事者でない僕からすれば、まさに最後に出てきた女性会社員が言った通りだなあ、と思います。別に朝から「あいさつ唱和」を行ったところで改善されるわけもないし、そもそも、やっていない、もしくは勤務時間が不規則でやれない部署がこんなにある状況では…
 しかしながら、この「無意味な強制」に対して「そんなことは意味がないし、みんな気をつけるからいいじゃないか」という反論ではなくて、【時間外の勤務命令は不当」として労使交渉を要求】なんていうのは、「法的には効果的な手段」なのかもしれませんが、そんなに大げさに騒ぐようなことかな、とも感じます。そんな「あいさつ唱和」なんて、5分くらいのものでしょうし。
 考えてみれば、民間企業の多くは、けっこう長い朝礼が行われていたり、厳しい「接客教育」が行われているのですから、こんな「あいさつ唱和」なんてバカバカしい、と思う人も多いのではないでしょうか?「社訓」とか「社歌」とかを一生懸命大声で言わされているところに通りかかったり、社長の長い訓示を毎週聞かされる、なんて話を聞くたびに、「そんなのバカバカしいなあ」と思いつつも、それに耐えなければならない「大人」というものの辛さが伝わってくるのです。中学生だったら、かったるいラジオ体操なんて、指の先をちょこちょこ動かすくらいだったのに、大人になってお金を稼がなければならない立場になれば、もっとバカバカしくて前時代的な「社訓」なんていうのを大声で叫ばなくてはならないのですから。

 しかし、こういうのが本当に「意識改革」につながっているのかどうかはかなり怪しいところで、実のところ「接客サービスの向上に努めている」ことをわかりやすくアピールしたい、というのが行政側の目的なのだと思います。こんなので実際に効果があるなんて、やっている側だって期待していないだろうけど、少なくとも「宣伝効果」はあるのではないか、と。
 確かに、役所の窓口というのも以前よりは無愛想な態度をとる人の割合は少なくなったような気はするのですが、こういう話を聞くと、「まだまだだなあ…」という気がします。本気でやるのなら、一般企業みたいに本格的に研修するべきなのに。
 ほんと、「あいさつ唱和」をさせるほうもバカだけど、「時間外勤務」なんて言って抗議するほうもなんだかなあ…
 なんだかもう「趣味の悪いデキレース」を見せられているような気がしてくるのです。
 どっちに転んでも、全然たいしたことやってないんだし、浮き彫りにされるのは、「危機感のなさ」ばかりで。