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2004年10月15日(金)
「プロ野球オーナーズ・クラブ」の面接風景

スポーツニッポンの記事より。

【新規参入を申請しているライブドアと楽天の第2回ヒアリングが14日、東京・港区の品川プリンスホテルで開かれた。日本プロ野球組織(NPB)の審査小委員会(豊蔵一委員長=セ・リーグ会長)が楽天、ライブドアの順番で約1時間半ずつ聴取。ライブドアはアダルトサイトの問題点とともに、アダルトゲームソフトの製造、販売を手がけている点を指摘されるなど、堀江貴文社長(31)が対応に苦慮。楽天と明暗が分かれる形となった。

 ライブドアのヒアリングが始まり30分が経過したときだった。豊蔵委員長が「ライブドアには健全育成に妨げとなるコンテンツはありますか?」と質問。堀江社長は「われわれがサービスの場を提供することはあっても、製造、販売はありません」と冷静に答えたが、その直後、清武委員(巨人球団代表)がアダルトゲームソフトのパッケージを取り出すと、低い口調で堀江社長に質問した。

 清武委員 ここに1つソフトがあるんですけど、製作・販売、ライブドアと表記されています。実際に製作などは行っていないんでしょうか?

 堀江社長 製作する会社は小さい会社で、資金力がない。われわれが窓口となっているだけです。

 清武委員 基本的に販売しかしないんであれば、そう表記すべきでは?

 堀江社長 そういう形にしないと、流通に乗せられないですから…。

 堀江社長の“苦しい弁明”を聞いた出席者たちの表情は曇り、会場は重苦しい沈黙に包まれた。

 この日のヒアリングでは財務関連の質問に加え、両社の主要事業であるインターネット関連で、アダルトサイトなどについて時間が費やされた。審査基準の1つである「公共財としてふさわしい企業、球団か」は、審査小委員会が重点項目として位置づけていたものだ。野球協約の第3条にも「野球が社会の文化的公共財となるよう努める」と記されており、清武委員は「公共財としての役割があるので尋ねないわけにはいかなかった」と説明した。

 楽天のヒアリングでも審査小委員会からアダルトサイトの取り扱いに関する質問が飛んだ。楽天側は一部のアダルトコンテンツがあることを認めた上で「クレジットカードがなければ入れない。そういう制限はできているし、合法的なサービス」と説明。同様の質問に堀江社長は「われわれは場を提供しているだけ。見逃しているわけではないが、排除は難しい」と答えるなど、両者の食い違いが顕在化した。

 「おのおのに特徴があり、差はある。比較考量は審査小委員会で詰めていきたい」と豊蔵委員長。この日のヒアリングは当初非公開で行う予定だったが、ライブドア側の希望で公開された。そこで飛び出した“アダルト問題”はライブドア側には“失点”となったとの見方もある。堀江社長は会見で「まだまだ決定まで時間がある。闘っている状況で過去は振り返れない」と強気の姿勢を崩さない。ヒアリングはこの日でほぼ終了。審査小委員会は26日の実行委員会に審査結果を答申する。

 ≪係争中の案件について≫両社には、業務に関する係争中の案件の有無も問われた。楽天が「全く係争中のものはありません」と答えたのに対し、ライブドアは「民事、刑事ともにあります」と回答。金融機関との間で民事で係争中であるほか、同じ相手から名誉棄損訴訟も起こされていることを明らかにした。】

〜〜〜〜〜〜〜

 このやりとりを聞いて、ネットに日常的に接している人であれば、ライブドアの堀江社長の言い分は、けっして間違ってはいない、と感じられると思うのですが。
 そもそも、ポータルサイトである「ライブドア」とネット通販をメイン業務としている「楽天」とでは、同じ「IT関連企業」とはいっても守備範囲は異なりますし、楽天だって「楽天広場」には「成人向けの日記」がたくさんあったり、楽天が買収したインフォシークで検索すれば、小学生だって入れるアダルトサイトなんて、腐るほどあるんですけどね。確かに、正式なコンテンツとしては、クレジットカードがないと入れない有料エリアには青少年が入るのは難しいかもしれませんが、無料アダルトサイトの「あなたは18歳以上ですか?はい/いいえ」なんてのが、「成人確認」だとしたら、まさに「形式だけ」だと思うのですが。

 そもそも、「面接での質問」というのは、けっこう「試験官次第」とうところがあるのです。僕が受験した某大学医学部の面接では、「どんな医者になりたいですか?」という質問が定番とされていて、僕はそれに対して「研鑽を重ね、地域医療に貢献できるような医師になりたいです」と答えて、試験官は「ふんふん」と頷いてそれで終わりだったのですが、僕の同級生は、僕と同じように答えたにもかかわらず、「それで君は、現在の地域医療の問題点をどれだけ把握しているのかね!受験生はみんなそう答えるが、そんなに甘いものじゃないんだよ!」とさんざん責められて辛かった、と試験が終わった後に話していました。この場合は、面接した先生も違ったんですけどね。
 それでも、質問者側にその気があれば、模範解答にだって、いくらでもツッコミを入れることは可能なのです。「楽天」の「クレジットカード認証」に対してだって、アダルトサイトを見る子供は、所詮有料サイトは観ないでしょうから(大人だって、クレジットカードの情報を入力しなければならないような有料アダルトサイトは、お金もかかるしセキュリティも不安だしで、それほど利用しないと思うのですが)、本当にそれだけで「ポータルサイト」としての楽天は「配慮している」と言えるのか?とかね。
 しかし、楽天側に対してはその問題を深く追求することもなく終わった、というのは、同じ人たちが質問者である以上、「無知」か「作為」としか考えられません。あるいは「先入観」か。
 暗黙の諒解、があったのかもしれないし、あるいは、楽天側にだけ、「こういう質問をするから」という想定質問集、みたいな情報が流れていた可能性もあります。ひょっとしたら、楽天のスタッフたちは優秀なので事前に察知していたのかもしれませんが。
 その一方で「ライブドア」に対しては、まさに「吊るし上げ」ともいえるような粘着攻撃。考えてみれば、ライブドア側はこの手の質問を想定していなかったのだろうか?とも感じるのですけど。
 堀江社長も「アダルトソフト」を自社が作っていたことを知らないわけでもなかったでしょうに。
 それにしても、そのソフトの現物まで持ち出して糾弾するNPB側も、「これは裁判なのか?」と言いたくなるような用意周到っぷりです。
 ちなみにその「アダルトソフト」はこちら
 うーん、少なくとも審査小委員会の委員の皆様方には、あまり理解されそうもないでしょうね…
 堀江社長の「名義貸し」のような言い訳は、さらに胡散臭さを増幅しています。そのソフトを積極的に売ろうとしていることは間違いないのだし。別に違法でもなんでもないのですが、「それでも、公序良俗に反するのではないか?」という聞き方をされると、「犯罪じゃないんだから」と開き直るわけにもいかないしなあ。
 どちらかというと、「客観的な判断」というより、「プロ野球オーナーズクラブ」というハイソな社交クラブへの入会審査で、いかに現会員たちに気に入られるか?という勝負のような気もしますが。
 
 とはいえ、この両者の質問に対する「答え」(というよりは、「対応能力」は、周囲の人にある種の印象を与えたのは確かでしょう。本音としては、三木谷社長も、「現状のインターネットで、『青少年に悪影響を与えるかもしれないアダルトコンテンツ』根絶は、技術的にもコスト的にも不可能」と考えていたとしても、やっぱりこういう場では「立派な建前」のほうが望まれているようです。
 高校球児が後輩を苛めたりタバコを吸っていても、やっぱり甲子園は多くの人にとって、「青春の汗と涙の場所」であり続けているように、夢を売る商売には、そういう「建前」だって必要なのでしょう。

 現状では、「楽天有利」は動かない情勢のようですが、ライブドアにとっては、ここまで(公共の電波で「メイドさん…」というソフトを大公開されたり、係争中の裁判について聞かれたり)虐げられながら、新球団を立ち上げるメリットって、はたしてあるのでしょうか?もう知名度も(良くも悪くも)上がったし、新加入すればワガママな選手やファンとボロボロの県営球場の修理(しかも、あの球場では近々「建て替え」という話になるでしょう)まで押し付けられるのに。
 確かに、既成球団の経営権譲渡ではない、「無の状態からの新球団立ち上げ」というのは、ものすごく面白いコンテンツだとは思うけど…
 結局「東北楽天」で落ち着いたら、「普通のプロ野球チーム」が、ひとつ減ってひとつ増えただけ、という気がして、一傍観者としては、つまらない感じもするんだよなあ。

 それにしても、前途有望な大学生に何百万円という裏金を渡して勧誘しているような大人たちが、他人に「青少年の健全育成」なんて説くのは、ちゃんちゃらおかしい話ではあります。
 ライブドアも「アダルトソフト」じゃなくて、「大人向け栄養ゲーム」というジャンル名にすれば、こんな目にあわなくて済んだのかもしれなかったのに。