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2004年10月08日(金)
『ネバーランド』を創った男

FLiXムービーサイトの記事より。

【「ピーターパン」の生みの親であるスコットランド出身の作家、J・M・バリーを描いた、ジョニー・デップの主演作『ネバーランド』が、バリーの親族から非難されている。この作品は、実在の人物を元に、世界的ファンタジーの誕生秘話を綴った感動作。しかしバリーの親族は、この作品が事実に基づいていないと不満を漏らした。劇中、バリーが初めてヒロインのシルビアに出会うシーンでは、シルビアの夫はすでに亡くなっているが、実際はまだ健在であったり、バリーとシルビアの関係が微妙に異なっているようで、親族は「事実に基づいていないのは残念。映画は歴史を書き換えることがよくあるけれど、少しの書き換えで、家族にとってはそれは他人になってしまう」と語っている。】

参考リンク:サー・ジェームズ・マシュー・バリ年譜

      ピーターパン&ジェームズ・バリ

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 僕はこの「ネバーランド」という映画のことは知らなかったのですが、少なくとも現在最も人口に膾炙している「ネバーランド」は、あのマイケル・ジャクソンが築き上げた「子供の楽園」(&性的虐待疑惑スポット)のことだと思われます。
 そして、好事家の方々は、その「ネバーランド」という名前が、「ピーターパン」に出てくる「永遠の若さの国」から取られているというのを御存知なのではないでしょうか。
 「ピーターパン」の作者である、J.M.バリという人は、スコットランドの貧しい機織り職人の家に生まれましたが、お母さんは彼にたくさんの物語を教え、それが彼の文学的基盤になったといわれています。そして、6歳のときには自作の芝居を上演するようになったそうです。
 バリが8歳のときに当時13歳のお兄さんが事故で亡くなり、そのときの「母の心では、兄は永遠に少年のままなのだ」という想いが、のちの「永遠の少年・ピーターパン」につながっているといわれているのです。
 そして、バリーは結婚生活が不遇だったこともあり、近所に住む二人の少年、ジョージとジャックと親しくなり、冒険物語や妖精の話などを聞かせて楽しむようになり、それが縁でその後、二人の両親(弁護士アーサー・L・デイヴィズと妻シルヴィア)やジョージたち5人兄弟とも親しくなったバリは、デイヴィズ一家を庇護するようになったのです。
 ちなみに、この5人兄弟の長男ジョンは22歳で第一次世界大戦で戦死、四男マイケルは20歳で溺死しています。
 バリーは、生涯「子供たちのために」さまざまな慈善事業を行い、亡くなる前には、【「ピーター・パン」による印税及び上演料すべてをグレイト・オーモンド街児童病院に寄付する】という声明を出してさえいるのです(ちなみに、この「著作権」は、2007年までで期限切れになってしまうので、児童病院は、「ピーターパン」の続編を書いてくれる作家を探しているのだとか)。

 こうして、バリーの生涯のことを調べてみたのですが(とはいえ、ネット少し時間をかけて検索したくらいでは、あまり多くの情報は得られませんでした。英語ができれば違うのかもしれませんけど)、バリーの生涯には、「若くして亡くなった人々の影」と「少年愛の傾向」がみられます。「少年愛」とはいっても、肉体的なものではなく、精神的なものだけだったのかもしれませんが、ここまで「子供」にこだわりがあったというのは、やはり「一般的ではない」と言わざるをえないでしょう。もちろん、それが責められるべきことかどうかは別として。

 僕はこの記事を読んで、「どうしてこの家族は、そんな『映画ではよくあるような枝葉末節の設定変更』にこだわるのだろう?」と思いました。
 【親族は「事実に基づいていないのは残念。映画は歴史を書き換えることがよくあるけれど、少しの書き換えで、家族にとってはそれは他人になってしまう」と語っている】というのは、有名な劇作者の親族とはいえ、あまりに偏狭なのではないか、と。
 「シルビアの夫が健在かどうか?」というのは、最初は不倫とかそういう話なのかと思いましたが、むしろ、現実のままのほうが不倫チックなのではないかな、とか、そんな感じもしましたし、【バリーとシルビアの関係が微妙に異なっているよう】とはいっても、2人の交流は100年以上も昔の話ですから、親族だって「本当の関係」は今となってはわからないのではないか、とか考えもするのです。

 「夢の世界を創造した人」の伝記が、多少フィクションでも(いや、あまりに悪意に満ち溢れた嘘では許せないでしょうが、これはそういう映画ではなさそうだし)、別にいいんじゃないかなあ、と僕は思うのですけどねえ。
 でも、マイケル・ジャクソンのせいで、「ネバーランド」もイメージ低下が甚だしいから、デリケートになる気持ちもわからなくはないのですが。