初日 最新 目次 MAIL HOME


活字中毒R。
じっぽ
MAIL
HOME

My追加

2004年05月19日(水)
「そんなに暇ならその時間を私にください」

「ダ・ヴィンチ」2004年6月号の記事、マンガ家・一条ゆかりさんのロングインタビューの一部です。

【一条「”自分探し”で悩んでいる人たちは生きるとはどういうことなのか、ちゃんと感じ取れていないのでしょうね。何かやりたいことがあれば、それが自分の核となる。問題が起こっても、いつでもそこに戻れるから迷いはなくなります。私は小学校のときからずっとマンガ家になりたいと思っていたの。時間を無駄に使っている不良を見てはうらやましがっていたくらいだもの。そんなに暇ならその時間を私にください。私が有効に使ってあげましょう、って本気で思ってた(笑)」

 マンガ家になったときのために、自分に汚点は残したくないと学校の勉強も一生懸命やった。それだけ自身がマンガ家になるということを信じて疑わなかった一条さんだが、彼女にとってのプロのマンガ家は、地味で貧しいといったイメージだった。お金をたくさん稼いで、チヤホヤされるとはまったく思っていなかった。逆にマンガ家イコール貧乏、ミカン箱の世界を想像していたという。】

〜〜〜〜〜〜〜

 「少女マンガの女王」こと一条ゆかりさんのインタビュー記事です。ちなみに、一条さんは1949年生まれ、1968年にデビュー以来「デザイナー」「砂の城」「有閑倶楽部」などの大ヒット作を生み出し続けておられます。
 ……とか書いている僕が読んだことがあるのは「有閑倶楽部」くらいなんです、すみません。

 それにしても、マンガ家として大成功されている一条さんですから「結果論」と言えなくもないのですが、それにしても彼女のこの強烈なモチベーションというのは、凄みすら感じてしまいます。
 「そんなに暇ならその時間を私にください」なんて、小学生とは思えません。
 しかしながら、「創作の世界でプロになる人」というのは、やっぱりこのくらいの自負心がないとダメなのだろうなとつくづく感じました。
 以前、原田宗典さんが「僕は自分が作家になるに決まっていると確信して疑いをもたなかったし、そのためにできるかぎりの努力をした」と書かれていたのを読んだこともあります。
 本当にプロになれる人というのは、ごく一部の例外を除けば「マンガ家になれればいいなあ」とか「小説書いて印税生活したいなあ」というような漠然とした「夢」レベルの発想ではないのでしょう。
 それこそ「書かないと生きていけない」というような衝動が必要なんでしょうね。
 でも、大部分の人は、その「自分のやりたいこと」が見つからないために「自分探し」をしてしまうわけで、そういう意味では、一条さんは羨ましい人なのかもしれません。
 「やりたいことがあれば、自分だって頑張れる!」と思いながら、結局何もできずに、ボーっと日々を過ごしている人って、けっこう多いのではないかなあ。
 そう考えると、「自分」なんて「探せば見つかる」というようなものではなくて、ひょっとしたら生まれついての「運命」みたいなもののような気もしなくはないのです。
 「自分探し」なんてやっている時点で、すでに「負け組」なのかな…

 実際には、「一条ゆかりになれなかったマンガ家予備軍」は、語られないだけでたくさんいるのでしょうから、どちらが幸せかなんて、一概には言えないことだけれど。