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2004年05月04日(火) ■ |
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「優秀な営業マン」になるためには? |
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「中島らもの特選明るい悩み相談室・その2〜ニッポンの常識篇」(中島らも著・集英社)より。
(「上司に『君の顔は営業向きでないから、なんとかしなさい』と言われて困っている」という女性の悩みに対する答えの一部です。中島さんの「自分は相手の言いなりにすぐなってしまって、営業マンとしてはダメだった」という述懐のあとに)
【ただ、自分以外の優秀な営業マンは、たくさん見て知っています。 たとえば「関所破りのK」と異名を取った営業マン。普通、得意先の担当者と会うためにはアポイントメントが必要ですが、このKさんはアポもとらずにどんな会社でもずいずい入っていって担当者をつかまえてしまうのです。受付嬢を笑わせるのがコツだそうです。 「やってあげましょうのT」さん。普通の営業マンは「仕事をくださいよ」と頼み込む人が多いのですが、このTさんは逆です。どんと胸をたたいて、やってあげましょう、やってあげようじゃないですか、と相手に迫り、いつの間にか仕事を取ってしまいます。 「脂汗のS」さん。この人は少しでも緊張すると顔中から脂汗が噴き出します。汗はあごを伝って、得意先の机の上にぽたぽたとしたたり落ちます。口だけ達者な営業マンの中で、この脂汗の効果は大きいのです。Sさんにはいかにも「実」があるように見えてしまうのです。 要するに、優秀な営業マンとは、自分のスタイルを確立した人のことをさすのです。】
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「優秀な営業マンになるためには」「他人とうまくコミュニケーションを取るためには」なんてハウツー本は巷にあふれているのですが、この中島さんの回答というのは、「どうすればうまく人と接することができるのだろう?」という悩みに対しての、ある意味、普遍的な答えになっているような気がします。 僕なども「患者さんにうまく接するには、どうしたらいいのだろう?」なんて、しょっちゅう悩んでいるものですから。 結局、「優秀な営業マン」というのは、ひとつの典型例にあてはまるものではなくて、その人それぞれの魅力をうまくアピールすることが大事、ということなんですよね。 「脂汗のS」さんなどは、はたしてどこまで意図的にやっているのかよくわからないのですが(本人はすごいストレスを感じながら仕事しているのかもしれないし)、「人前で緊張すること」だって、相手にとっては「誠実さ」を感じさせる態度であったりもするわけですし。 たぶん、Kさんが人前で緊張してみせても相手はなんだかウソくささを感じてしまうでしょうし、Sさんが「やってあげましょう!」とアピールしてみても、相手からは「ムリしてるな、この人」という印象しか与えないような気がします。大事なのは、自分の本質を見極めて、それにあったやり方をやることなのです。 そういえば、医者の世界にも「自信満々であることがイヤミにならないタイプ」の人もいれば「謙虚であることが自信がないように見えてしまうタイプ」なんて人もいて(もちろん、その逆に「背伸びしているようにしか見えない人」もいます)、けっこう口が悪くても言われたほうが笑ってしまうような先生もいるんですよね。 もちろん、肝心の技術がないと、「患者さんへの接し方」もなにもないわけですが。
しかし、この「自分のスタイルを確立する」というのは、実際は難しいことなのだと思います。こういうのは、相手との「相性」という要素もあるわけですから。 医者にだって「頼れる、自信満々の人がいい」という患者さんもいれば、「話しかけやすい、優しい感じの人がいい」という患者さんもいるわけで、それぞれのストライクゾーンというのは、当然違っています。 そういえば、ある有名な野球選手は「どんな選手でも、すべてのコースを完璧に打つことはできないから、大事なのは、自分の得意なコースは確実に打てるようにすることだ」と言っていました。 たぶん、全部のコース対応しようとしてすべて中途半端なバッティングになるよりは、そのほうが結果を出せるのだと思います。 打てない球が来てしまった場合には、なんとかしてファールにして逃れる、と。
本当は、場合によって自分のスタイルを使い分けられればいいんでしょうけどねえ… でも、その「使い分け」をやろうとして自分のスタイルを見失ってしまうというのが、きっと多くの人にとっての現実なのでしょう。 もちろん僕も、そういう人間のひとりなんですけどね。
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