|
|
2004年03月02日(火) ■ |
|
「号泣させる準備はできている」 |
|
サンケイスポーツの記事より。
【フジテレビの大多亮プロデューサーが1日、東京・宇田川町の渋谷ビデオスタジオで、同局系の次期月9ドラマ「愛し君へ」(4月19日スタート、月曜後9・0、初回は15分拡大)の説明会を開いた。
公開中の映画「解夏」のドラマ化で、視力を失っていく売れっ子カメラマン・俊介(藤木直人)の姿を、彼を愛し支えようとする女医・四季(菅野美穂)の視点で綴るヒューマンタッチのラブ・ストーリー。原作は歌手、さだまさしの同名小説。共演には四季の友人役で伊東美咲、玉木宏。父親役に泉谷しげる。
月9続投の大多氏は「今回は号泣のゲツク」と明言。「ラブ&ファイトで盛り上がる『プライド』とは正反対。大きな運命を背負ってしまったら人はどう動くか。その心情をきちっと描きたい」と説明した。
脚本は「あなたの隣に誰かいる」の坂元裕二氏で6日の長崎ロケからクランクインする。】
〜〜〜〜〜〜〜
さだまさしさん原作の「解夏」は、感動的な映画みたいですね。 ちなみに、映画版のあらすじはこちら。
今回のドラマ版では、「視力を失っていく売れっ子カメラマンと彼を愛し支えようとする女医のラブ・ストーリー」というふうに、筋が変えられています。これはおそらく、カメラマンという、とくに「目」が重要な職業の男性と医者でありながら、恋人の病気を治せない女性、という、悲劇性を増す効果を狙っているようです。 「今回は号泣のゲツク」なんて、すごい自信だなあ。
しかし、僕はなんとなく、「この番組では泣けないだろうなあ」という予感がしています。もともと、あまり「感動の映画」で泣くことはほとんどないですし。 そういえば、「タイタニック」では泣きそうになりましたが、あれは「真っ暗な冬の海で、あんな怖い目にあった人たちがいたのだなあ、もしあの場に自分がいたら…」というような恐怖感からでした。ジャックとローズの悲恋なんていうのは、「所詮作り話だしなあ」「女は強いなあ」という程度の印象しかなくて。
正直、あまりに「感動させてやる!」という舞台設定のドラマって、好きじゃないのです。かえって「そういうシナリオなんだろ?」なんて言ってしまいたくなるので。作り物感が強いというか… 僕が「泣ける」のは、ドキュメンタリーやスポーツなんですよね。
こういう「感動のドラマ」で素直に泣ける人って、気持ちが真っ直ぐなような気がするし、なんだか羨ましくもあるのです。でも、その一方で、「本当に主人公に感情移入していたら、ここで泣けるのか?」と思うような状況って、けっこう多いんですよね。本当は「感動している自分に酔っている」だけなんじゃないの?って。「主人公にとっては、泣いているどころじゃない状況」で、泣いている観客って、けっこう多い。
実際は、「ストーリーに感動して泣く」というよりは、「感動したい人」の泣きのスイッチを押すだけ、という話ばっかりのような… 要するに「泣く人は何を観ても泣くし、泣かない人は、何を観ても泣かない」のではないかなあ、という気がするんですよね。 「泣けば感動している」というものでもないだろうし。 もちろん、大部分の観客は、その両極の間のどこかに位置しているわけですけど。
僕は、映画版の「解夏」の魅力というのは、「普通の小学校の先生とその恋人」という「ごくありふれた人々」に起こった、誰にでも起こりうる悲劇を描いた、というところにあると思うのです。 それを考えると、今回の設定の変更やいかにも「月9的」な凝った言い回しや演出というのは、かえって観る側の「リアルな共感」を無くしてしまう結果になるのではないかな、という予感がします。
「号泣させる準備はできている」 なんだか、そういうふうに、作り手の「泣かせてやる」っていう意図が透けているのって、僕はちょっと苦手。
ちなみに、今まででいちばん泣いた映画は中学校のときに観た「風の谷のナウシカ」です。あのエンディングは、ガマンできなかった… やっぱり僕も、「泣きたい人」なのかな。
|
|