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2003年09月08日(月) ■ |
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「森のいかめし」が、「駅弁日本一」になった理由。 |
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「翼の王国」(全日空の機内誌)9月号の記事「森のいかめしキャラバン隊長」(佐藤隆介・文)より。
【(株)いかめし阿部商店の本社は、森駅からすぐのところにあった。むろん単なるオフィスではなく製造所でもあって、森駅と駅前の柴田商店で売る分は毎日ここで作っている。しかし、その数は微々たるものだ。駅弁とはいえ、「森のいかめし」の最大の販路は全国のデパートにあるからである。
(中略)
専務によれば、森のいかめしの全国デパート巡回販売は例年九月から翌春三月まで、師走を除いた六ヵ月が勝負だ。この半年間の間に何と二百五十回もの実演販売を各地のデパートで遂行しなければならない。
(中略)
一度に三つか四つのデパート販売ならチーム編成も楽なものだが、同時に十店以上となると話は簡単ではなくなる。ちなみに、これまでの同時出店の最高記録は十七店。こういう非常事態に際しては、キャラバン隊といっても隊員たった一人ということもある。】
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北海道名物の駅弁「森のいかめし」の名前は、「駅弁日本一」として、耳にされたり、実際に口にされたりした方も多いのではないでしょうか? 僕の友人も、北海道物産展で、この「森のいかめし」を見つけて買ってきたそうです。 「思ったよりイカは小さくて柔らかくて食べやすく、美味しかった。こういう機会でもないと、食べられないしね」という感想を述べていました。 実際のところは、「こういう機会でないと」と言いつつも、「森のいかめし」は、地元北海道で売られているよりも、デパートの物産展や駅弁祭りなどでの売り上げが、現在では大部分を占めているようなのですが。 ちなみに、この「いかめし」に使われているイカは、地元北海道産だと僕も思っていたのですが、実際のところは、ニュージーランド産のマイカなのだそうです。当初は北海道産のイカだったのが、材料難から世界中を探して見つけたのがこのイカで、「北海道産よりも、煮ても柔らかくて美味しい」のだとか。 こうして考えると、海外産のイカを材料に、全国のデパートで販売しているわけですから、この食べ物が、発祥の地とはいえ「森のいかめし」として売られていること自体、ちょっと不思議な気がしてきます。 今は、どこの「名物駅弁」も、そんな感じらしいということなのですが。
しかし、僕自身も旅行に行く際に、駅弁を買う機会は、ほとんどなくなりました。 新幹線の駅で売られている駅弁の種類も数も、僕が子供の頃に比べると、圧倒的に少なくなってしまった印象があります。 乗り物のスピードアップによる乗車時間の短縮の影響もあるでしょうし、ほかほか弁当やコンビニの店舗が増えたことにより、「冷たくて(中には、温められるような特殊な構造になっているものもあるらしいですが)、割高」な駅弁というのは、生き残りに苦戦している状況なのでしょう。 ところが、デパートなどでは逆に、「その駅でしか食べられない」というイメージのために、名物駅弁がものすごく売れてしまう、らしいのです。 もちろん、この「森のいかめし」には、秘伝の味つけという武器があるのも事実なのですが。
実際に旅に出てみれば現実的な選択をしているにもかかわらず、家にいると旅の雰囲気を求めてしまう… みんな、所詮そんなものなのかもしれませんね。 ちなみに、この「森のいかめし」は、小ぶりのイカが2匹入っていて470円。 量は、実際に食べた友人によると「一食分としては、ちょっともの足りないくらい」だそうです。
こうして考えると、食べ物というのは、舌や鼻だけではなくて、記憶や想像力も使って味わうものなのかもしれませんね。 「森のいかめし」は、イカとご飯と調味料(実際の味付けは醤油とザラメだけなのだとか)そして、いまや本物の旅では感じることができなくなってしまった「旅情」を味わうための駅弁なのでしょう。
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