監督:木村大作 出演:浅野忠信 香川照之 仲村トオル、他 オススメ度:☆☆☆
【あらすじ】 明治39年、陸軍参謀本部陸地測量部の測量手・柴崎芳太郎は日本地図を完成させるべく、最後の空白地点「劔岳」の初登頂をして測量せよとの命を受ける。劔岳は「死の山」と呼ばれる険しい山で、かつて幾人もの測量士が登頂を目指すも未踏峰のままだった。ところが最近出来た「日本山岳会」が海外から最新鋭の装備を購入して劔岳初登頂を目指しているという情報が入り、柴崎は「軍の名誉を掛けて初登頂せよ」とプレッシャーを掛けられる。
【感想】 新田次郎氏著の同名タイトル小説を映画化。 監督の木村大作氏は、長く邦画界の名作を支え続けたカメラマン(撮影監督)で「八甲田山」「鉄道員(ぽっぽや)」他、数多くの作品の撮影を手掛けてきた映画人ですが、自らがメガホンを取った監督作品は本作が初めてなんだそうだ。
そんな訳で撮影畑のプロ中のプロだけあって、本作は素晴らしい立山の四季を見る事が出来ます。 眼前に聳え立つ、何者も寄せ付けぬ威風堂々たる風格の劔岳は勿論の事、雲間に浮かぶ富士山、真っ赤に染める雲海、赤に黄色に葉を染め抜いた色鮮やかな紅葉、黒々とした岩肌、何もかもを飲み込んでしまいそうな雪渓・・・四季折々の様々な時間の立山の神々しく美しい大自然を、見事にスクリーンに切り取っています。
また、本作ではCG等の画像処理は行わず、キャストとスタッフは約200日もの長期ロケを敢行し、実際にこの山に入り来る日も来る日も山を登り、テント生活もして過酷な自然と共存しながら撮影を行ったそうです。 だから自然が発するオーラ、登頂を目指す主人公達一行の生々しい苦痛の叫びがスクリーンから溢れ出すかのよう。
ついでに言うと、本作はほとんどを「順撮り(シナリオの順番通りに撮影する事)」したそうで、実際映画を見ているとよく判るのですが、浅野さん以下出演者の皆さんが、最初の頃は小奇麗で肌にハリもあってお元気そのものなんだけど、話が進むに連れてヒゲぼうぼうになり、顔は日に焼けくたびれて行って、最後の方は本当に「疲労困憊」といった風情(苦笑) 要するに「とことんリアルを追求した映像」という事ですね。本当に物凄い迫力があります。
そんな訳で映像は文句なしに太鼓判なんですが・・・ちょっと監督が本作に思い入れを持ち過ぎな気がしますね。 いや、思い入れのない作品なんてそれこそクソなんだけど(苦笑)、要するに入れ込み過ぎて丁寧に作り過ぎたのか?やたら話が冗長になってダラダラとした印象が強いんですよ。 映画前半なんてかなり端折れるエピソードやシーンが多いんですが、とにかく何もかも丁寧に見せ過ぎなんです。だから無駄に上映時間が長くなって(ちなみに本作の上映時間は2時間半弱)映画中盤までかったるくて・・・(^-^;
本作は「軍の測量士チームvs趣味の山男達のガチ対決」がメインになるので、どうしても絵面がむさ苦しいおじちゃん達ばっかりになってしまうのを嫌ったのか?一応ヒロインとして主人公の妻役に宮崎あおいちゃんを起用しています。 まあ相変わらずあおいちゃんは可愛らしいんだけどー・・・正直彼女のシーンはほぼどーでもいいですね(をい)、いや本当に特に内容に深く食い込む役回りでもないですし、これだけ上映時間が無駄に長くなるくらいなら、いっそバッサリ切っちゃった方がよかったかもしれない。
散々引っ張って「ここまで険しい山、本当にこんな軽装備で登るのは流石にムリでしょー」みたいな気分モリモリにさせてくれたのに、映画中盤までに時間を掛け過ぎたからなのか?クライマックスが「あれれっ!?」っと拍子抜けするくらいアッサリしていて・・・うーむ。これはどーしたモノか(滝汗)
人生訓までご教授頂ける、それはそれは有難く素晴らしいお話なんですよ。 特に引きニートな皆さんには是非是非ご覧になって頂きたい、本当に心に染みるお話のハズなんです。 それなのに何かスッキリしないと言うのか、もう本当に「冗長過ぎる」の一言に尽きますわ。何とも勿体無い作りです。
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