監督:ブライアン・シンガー 出演:トム・クルーズ ケネス・ブラナー ビル・ナイ、他 オススメ度:☆☆☆−
【あらすじ】 第二次世界大戦下のドイツ。チュニジア戦線で負傷し、右手・左手指・左目を失ったシュタウヘンベルク大佐は、祖国を守る為にはヒトラーを暗殺するしかないと考えるようになる。当時ドイツ軍は戦争捕虜達が国内で叛乱を起こした際に鎮圧する為の計画「ワルキューレ」を用意してあったが、シュタウヘンベルクはこの「ワルキューレ」を逆手に取ってヒトラー暗殺とその後の軍制圧・政府転覆を完遂させるという作戦を思い付く。
【感想】 「ユージュアル・サスペクツ」「X-メン」のブライアン・シンガー監督×トム・クルーズ主演の話題作。 トム・クルーズ演じるシュタウヘンベルク大佐以下、本作の登場人物は全て実在人物。そしてシュタウヘンベルクがヒトラー暗殺と政府転覆を目論んで利用しようとした「ワルキューレ」という計画も実在。当然だけど本作で描かれているヒトラー暗殺計画も実際に起こった有名な話です。
いきなり書きますが・・・ 本作で描かれている「1944年7月20日暗殺未遂事件」を元々知っているか・知らないかで評価が分かれそうな予感です。 ちなみにぴよは本作の事件の事は元々知っていました。第二次世界大戦のナチス・ドイツに興味を持った事があり、尚且つ文献等で調べた事のある人なら、「知ってて当たり前過ぎる程有名な事件」でしょう。 ヨーロッパ諸国の方ならほとんど知ってるであろうと。日本人にはもしかしたら馴染みが薄いかもしれません。
当時のドイツは独裁者ヒトラーの下で国が一枚岩になっていた・・・訳でもなく、ヒトラーのやり方に異を唱える人物は軍部内にも国民の中にも多数存在し、「ヒトラー暗殺未遂事件」というのは実に40回以上も起こっている。 その暗殺計画の中でも最も大規模で最も熾烈を極めたのが本作の「7月20日暗殺未遂事件」、本作ではこの事件の前に未遂に終わった暗殺計画「閃光作戦」から描いています。
で、本作なんですが。 要するに「7月20日暗殺未遂事件」に至るまでの経緯、そして暗殺計画の実行、終焉までを再現ドラマ化したものです。 だから本作の事件を全く知らない人にとっては非常に勉強になるだろうし、一見の価値は充分にあると思います。もしかしたら第二次世界大戦に興味のない多くの若者は、当時のドイツは国民総出でヒトラーを祀り上げていたと勘違いしている人も多いかもしれませんしね。
だけど本事件を元々知っていた人が見ると・・・正直「平坦で退屈」だと感じてしまうんじゃなかろうかと。
本当に「再現ドラマ」でしかなく、そこにシュタウヘンベルク以下、この事件に関わった多くの人々の心の内や葛藤等、主要登場人物の心理描写がほとんど描かれていない。 そもそも何故彼らは国を守る事がすなわち「ヒトラー暗殺」という考えに至ったのか、その結論に達するまでに・達した後に感じていた彼らの思いをほとんど伝える事はなく、淡々と「起こった事」を時系列順に羅列しているだけでした。 まるで観客を彼らの心情に触れさせてはいけない、とでも画策されたかのように。
人間ドラマ部分をそぎ落とす事で、息詰まるサスペンス色の濃い作りになっています。 だけど「サスペンス」と考えると・・・結末は誰もが知っている訳ですしね。本事件を知らない人だって、ヒトラーは暗殺された訳ではなく敗戦時に自殺したという事位は知っているでしょ? オチが最初から判っているサスペンスなんて、いくら緊迫感のある作りに腐心していても盛り上がりませんよ(涙)
トムちん以下、脇役まで非常にゴージャスなキャスティングをしていて、彼らの演技だけでも見せ場は充分♪ でもトムちんはやはりトムちんだった。いや当たり前なんだけど(^-^; 何て言うのかー・・・ハリウッド映画だな、トムちんのヒーロー映画だな、豪華だな、金掛かってるな、やっぱり英語しか話さないんだな(このツッコミはそもそもしちゃダメぇ〜)、という感想が頭の中を駆け巡って行ったという次第で(薄涙)
コレは本作が取り上げた事件を元々ぴよが知っていたから、という事だろうと思います。 事の展開を全て知ってる話をただ再現されても面白くない。だから更にもう一歩踏み込んだ人間ドラマ部分にスポットを当てた作りだったり、はたまたどうせ本国ドイツではなくハリウッド映画として作るんだから、ここは大胆な脚色を加えて「事実とは異なるが、実はこの事件にはこんな裏があったりしてナ♪」みたいな「IFネタ」にしちゃっても面白かったかもしれない。 ・・・まあ、史実の映画化で「IFネタ」やると、世間からぶっ叩かれるのが常ではありますけどネ(苦笑)
そんなこんなで、本作の事件をご存じない方には少なくとも強く鑑賞をオススメしますよ。 「史実を知る」という側面を鑑みると、本作は非常に意味のある作品だと思いますから。
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