監督:瀧本智行 出演:松田翔太 塚本高史 山田孝之、他 オススメ度:☆☆☆−
【あらすじ】 国民は「国家繁栄維持法」により、1/1000人の確率で18〜24歳の間に国の繁栄の為に殺される事になっていた。アトランダムに選ばれた国民には国から死の予定時刻の24時間前に「イキガミ(逝紙)」と呼ばれる死亡予告証が手渡される。無事に25歳になり死を免れた国家公務員の藤本は、イキガミを死亡予定者に配達するという仕事に就いた。今日もまたイキガミを持って死亡予定者の家を訪れる藤本だったが・・・
【感想】 間瀬元朗氏著の同名タイトルコミックを映画化。
今話題になっているので先に触れますが、本作の原作コミックを未読&予告編を一度も見ずに鑑賞したので、本作がどういう内容でどういうあらましの作品か前知識ゼロ状態でした。 映画を見ながら「コレ、絶対にどっかで読んだ事のある話だよなぁ〜。何だったっけ?」と思っていたのですが、自宅に戻ってネットに繋げたら本作の剽窃疑惑のニュースが出ていて、「ああ!そーだ。星新一の小説と全く同じ設定だったんだ!」と思い当たったという訳でして。
本作と星氏の作品では発するメッセージ・表現方法はまるで違うので、印象的には全く異なります。 だから本当に「たまたま同じような事を考えた人がいた」というだけの事だろうと思います。ですが、やはり先に小説の方を読んだ・学生時代に星氏の作品には随分楽しませてもらった身としては、どうも何か腑に落ちない気分にはなります。
さて、映画とは関係ない事を書きましたが・・・本作。 死亡予定者(小学校入学時に接種する注射に1/1000の確率で時限爆弾のようなカプセルが混入されている)には、死の予定時刻の24時間前に役所の人間から「イキガミ」という死亡予告証が手渡される事になっていて、本作ではそのイキガミを渡された3人の若者の生き様(死に様)とイキガミを渡す側の役所の人間「藤本」の関わり等を見せるオムニバス・ストーリー仕立てになっています。
3つのオムニバス・ストーリー自体には特に繋がりがなく、敢えて何か繋がりを見出すとすれば、主人公がイキガミを渡す仕事をしている「藤本」なので、話の全てに藤本が登場するという事くらいか?
「後24時間後に自分が確実に死ぬ」と判ったら、人は何をするだろうか? ある人は自分が最も恨んでいた人を殺してやりたいと思う。ある人は自分の本当の夢を叶えようとアピールする。ある人は死後に遺される自分の家族の為に、最善の未来を手渡してやりたいと思う。 ・・・そういった様々なケースを、その全てのケースに関わった藤本の心の葛藤等を交えながら羅列していきます。
結構感動的なシーンも多いんですが(個人的にはやっぱ最後の兄妹の話が一番ジーンと来ましたね)、 正直言うと「本作の意図」「何が言いたい話なのか?」がよく判らなかったです。 人はいつ死ぬか判らないんだから、今を一生懸命生きようという事?そういう意図なら政治家の息子の話は必要がないような気がしますし、イキガミを渡す藤本の心情が本作の訴えたかった部分?だとしたら、結局はアナタは明日もイキガミ持って配達に行くんでしょ?何も変わらないんでしょ?って感じで白けちゃいますし(苦笑)
後、「国家繁栄維持法」に異を唱える国民は「思想犯」として捕らえられて矯正されるらしいのですが、原作コミックではこの思想犯の矯正のカラクリ等も描かれているのでしょうか? 映画では非常に中途半端な表現がされていて「とにかく矯正されちゃいましたー♪」みたいな結果だけが提示されているだけなので、この思想犯が登場する思惑がよく判りませんでしたね。 「こんな恐ろしい国家になっちゃったらどーするー?」という話・・・とも思えませんし。だったら3つのエピソードをダラダラと羅列するよりも、反旗を翻した思想犯達の奮闘を見せる話にした方が盛り上がりそうですしね(^-^;
そんな訳で、今ヒトツ作品の見せたいモノが判らなかったので「むぅ〜」という感じはするのですが・・・ 3つのオムニバス・ストーリーは、それぞれなかなかよく作られています。「余命いくばくもない系」の究極版、何しろ死ぬ日時がキッチリ判っている期限付きの「余命いくばく系」なので、既存の様々な余命ネタをタイムリミット付きで見せられる。
見ている観客は「死ぬまで後○時間」というクレジットを見ながらハラハラ出来るし、癌みたいに「奇跡的に助かったー!」な脱力オチもなく絶対に死ぬのが判っているので、あらかじめ感動のクライマックスに向けて心の準備をしながら、更にカバンからハンカチを取り出す余裕も出来てしまうという・・・何ともお得な感じです(笑)
何だか嫌味な感想になっちゃいましたねぇ(溜息) 仕方ないですよ。気分的には星氏のご遺族のお気持ちに傾倒しちゃいますもん。←ふりだしに戻ってんじゃん(^-^;
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