監督:黒沢清 出演:香川照之 小泉今日子 井之脇海、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 父・母・大学生の兄・そして小学6年のボク、ごく平凡な4人家族のハズだったのに、それぞれ秘密を持っていた。父は実は会社をリストラされて失業中である事を家族に言えずにいた。バイトに明け暮れる兄は、ある日突然「米軍志願兵になる」と言い出した。ボクも給食費をくすねてこっそりピアノ教室に通っている。そして優しい母も・・・
【感想】 2008年カンヌ映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞して話題になった作品。 本作は出演役者も超豪華!上記の香川照之さん、小泉今日子さんは言うまでもなく、脇役には黒沢作品の常連・役所広司さんも出演し、カンヌの冠に華を添えてくれています。
話は、ごくありふれた4人家族がそれぞれ持つ秘密、それに絡む悲喜こもごも、そして再生?までを描いています。 ・・・あ、すげー簡単にオチバレしちゃいました。すいません(^-^;
家族4人がそれぞれ持っている「秘密」というのが、よくありがちなネタから「絶対にコレはないわ」というネタまで程よく網羅しているのですが(程よくって何だ?) まあとりあえず誰もが「ああああ」と思うであろうネタは父の「リストラされたけど家族に言えない」というヤツ。実際に同じような話は世の中にごまんとありますし、それが理由で離婚するご家庭も多いので身につまされる物がありますよね。
次が末息子の「親に内緒でピアノ教室に通う@月謝は給食費をネコババ」ネタ。 まあイマドキのご家庭は「情操教育の為」と称して子供が嫌がっているのにムリヤリお稽古事に通わせるケースの方が圧倒的に多いので、共感が得られるか?までは疑問ですが、例えばコレが「給食費として渡したお金がいじめグループに恐喝されて取られていた」というネタだったら、充分頷けるんじゃなかろうかと思いますね。 要するに「子供が親に内緒で親から渡された金を別の目的に遣っていた」という括りで見ればいいんじゃないかと。
親父のリストラネタと息子のピアノ教室ネタは少し被っていて、リストラされた事を妻にも言えない親父は、今後の生活費の事も気掛かりだし、何より「一家の大黒柱」という自分のアイデンティティが瓦解するのを恐れて、「ピアノを習いたい」という息子の願いを理由もなく(でも強行に)退けてしまう。 強い立場に出る事で、自分の足場を確保しようとするミジメな親父の実像を浮き彫りにしています。
この「リストラ親父→ピアノを習いたい息子」の流れは非常に好きなのですが・・・ 残りの「米軍志願兵になりたい息子」と「日常に埋没された主婦」のネタがどーにも肌に合わなくて(^-^; 特に「主婦 vs 強盗」ネタは余りにも何もかもが不自然過ぎて、何となく「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」をも彷彿とさせるシーンではあるものの、でも絶対に違うんだよなぁ。 多分一番ファンタジーっぽいネタなんだけど、でも違うんだよなぁ〜(薄涙)
ある意味、「日常を切り取ったホラーファンタジー」とも取れるような、人間描写を中心とした作品なんですが、余りにも突拍子もない展開があったり「実際の日常として有り得ない」展開があったりするので、違和感を感じて馴染めない人もいるんじゃなかろうか?と思ったりします。
でも個人的には「意外に面白い」と思ったんですよ。 かなりディフォルメされてはいるものの、もっと自分にとって身近なネタに転化して考えると、本作の登場人物の思考展開や語るセリフには、それ程違和感は感じなかったです。むしろ「ああ、判るなぁ」と思える部分も多々ありました。 そういう意味では、本作がカンヌの「ある視点」部門で絶賛されたのも何となく判りますね。
多分この手の作りはダメな人には全く受け入れられないでしょうけど・・・一見の価値はあるかと。
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