監督:ロバート・レッドフォード 出演:トム・クルーズ メリル・ストリープ ロバート・レッドフォード、他 オススメ度:☆☆☆
【あらすじ】 ベテランジャーナリストのジャニーンは、「未来の大統領候補」と目されるアーヴィング上院議員に呼び出され、独占インタビューで彼から対テロ戦争の新戦略について聞かされる。同時刻のカリフォルニア州、大学の歴史学教授マレーは、成績優秀なのに最近勉学に身を入れなくなった生徒を呼び出して話をしていた。マレーは生徒にある2人の教え子の話を始めるのだった。更にこの同時刻・アフガニスタン。2人の若き志願兵が、今正に新戦略実行の為に動き出した・・・
【感想】 名優ロバート・レッドフォードが7年振りにメガホンを取った最新作。 キャストがとにかく豪華。アーヴィング上院議員役をトム・クルーズ、アーヴィングに独占インタビューするベテランジャーナリスト・ジャニーン役をメリル・ストリープ、そしてロバート・レッドフォード自身も大学教授マレー役で出演。 キャスティング見ただけでお腹いっぱいになりそう〜。
さて本作。 予告編を見た時には「ある若手代議士による対アフガニスタン工作に関する陰謀を暴くサスペンスアクション」だとばかり思って本作を鑑賞した訳ですが、これは明らかに日本の映画配給会社の付けた全く内容と噛み合わない邦題と、日本人好みするサスペンスアクションと勘違いさせるように作為的に製作された予告編による「観客誘導」だった。 どう考えても客に勘違いしてもらうのが目的の予告編だとしか思えない。映画を見始めてみて、ようやく本作のタイトルが内容に対して付けられたのではなく、配給会社から観客に仕掛けた「大いなる陰謀」だったと判った次第(苦笑)
配給会社が「大いなる陰謀」を企む気持ちも判らなくはないです。 本作は同時刻の別の場所で繰り広げられる3つの出来事を並列して見せ、観客に問題提起をするという作品。しかも映画のほとんどは1対1の対話シーンを見せるという静かな展開に終始。 更にネタは対テロ戦争に関するアメリカの政治・政治家・世事に無関心な若者に対するメッセージ性が濃い。およそ日本人にウケる要素が少ないので、いくら日本でも人気の役者が雁首揃えて出演しているとは言え、配給会社も邦題や予告編の作りには苦慮した事でしょう。
今年はアメリカ大統領選の年という事も手伝ってこの手の映画は作られて然るべき、更には積極的(熱狂的?)な民主党支持者としても知られるロバート・レッドフォードにとっては「今こそ俺が言いたかった事が作れる!」と息巻いてメガホン取ったんだろうなぁ〜・・・等とうがった見方をしちゃいますが、そういう製作者サイドの意図を考えずに見れば(見れるのか?)本作は実によく出来た脚本だったと思うんですね。
本作に登場する、社会的マイノリティであるアフリカンアメリカンとメキシカンアメリカンの2人の生徒が、自ら志願兵となって戦地に赴く事を決めた理由の中に(これだけが理由ではないだろうけど)志願兵となって復員して来ればその後の大学の学費が免除されるから、と語るくだりがあったんですが、この辺りの話が一番ぴよの関心を引きました。 本作の「代議士編」「大学教授編」「戦地編」の中では大学教授と生徒のやりとりのパートが最も興味深かったし、もしかしたら大学教授の役を演じながら本作で一番言いたい事をロバート・レッドフォード自身がクチにしたかったんではないか?という気がしたんですけどね。
本作は延々と議論をぶつけ合うシーンで観客に問題提起はするものの、コレといって答えを提示はしない。 この部分に関しては賛否両論あるだろうと思うのですが、個人的にはこの作りでよかったと思います。もし監督ご自身の考えをそのままあけっぴろげに示してしまうと、単なるプロパガンダ映画になってしまいますからね(苦笑)
それにしても悔やまれるのは邦題と予告編の作りですなぁ・・・ 期待した方向と余りにも違っていると、その作品がたとえ素晴らしいモノだったとしても「裏切られた」ような気持ちになってしまうのは致し方がないと思うんですよ。 かなり映画が進むまで「いつサスペンスになるんだろ♪」と思って見てたから(←非常に察しの悪いヤツ)、淡々としたセリフの応酬シーンの繰り返しに「まだかよー」ってダレダレになってたじゃないですか(^-^; 日本の映画配給会社の皆様、アナタ達の罪は深いですよ。ホントに・・・
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